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慶應義塾大学経済学部経済学科3年生。
スタディコーチで勤務をしており、それ以前も小学生~大学受験生まで幅広い指導経験あり。
受験生の皆さんが損しないよう、お役立ち情報を日々発信していきたいと思っています!
「1対1対応の演習」は、株式会社東京出版が発行する大学受験数学の問題集シリーズです。月刊誌『大学への数学』から派生した書籍であり、長年にわたり難関大学を目指す受験生から高い評価を得ています。その名の通り、1つの「例題」と、それに対応する1つの「演習題」が見開き1ページに収められているのが最大の特徴です。これにより、インプット(解法理解)とアウトプット(実践演習)を効率的に繰り返す学習が可能であると公表されています。
シリーズは数学の分野ごとに分かれており、新課程版(2025年8月現在)では以下の6冊で構成されています。
【塾講師のコメント】
本シリーズは、網羅性よりも「質の高い典型問題」に絞り込んでいる点が特徴です。分冊形式のため一見すると負担が大きいように感じられますが、1冊1冊は薄く、テーマが明確に分かれているため、計画的な学習に適していると考えられます。理系受験生は6冊、文系受験生は主に数学I, A, II, B+Cの4冊が学習対象となるでしょう。
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各分冊の収録問題数は以下の通りです。例題と演習題はほぼ同数であり、両方を合わせて1冊あたり約100~160題の問題に取り組むことになります。
| 科目 | 例題数 | 演習題数 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 数学I | 約53題 | 約50題 | 約103題 |
| 数学A | 約54題 | 約54題 | 約108題 |
| 数学II | 約83題 | 約83題 | 約166題 |
| 数学B+C | – | – | – |
| 数学III | 約75題 | 約75題 | 約150題 |
| 数学C | 約36題 | 約50題 | 約86題 |
※注: 問題数は改訂により変動する可能性があります。上記は旧課程版を参考に記載しており、新課程版(特に数B+C)は情報が更新される可能性が高いです。
【塾講師のコメント】
問題数は、いわゆる「網羅系参考書」と呼ばれるもの(例:青チャートなど)と比較すると絞り込まれています。これは、全ての解法パターンを網羅するのではなく、入試で頻出かつ応用範囲の広い「核となる解法」を深く理解させるという設計思想の表れと分析できます。受験生は、やみくもに問題数をこなすのではなく、1問1問から最大限の学びを得る姿勢が求められます。
本シリーズの難易度は、大学入試における「基礎」と「応用・発展」の中間に位置します。具体的には「入試標準レベル」と評価するのが最も適切です。
本シリーズに取り組む前に、教科書レベルの内容を完全に理解していることが必須条件です。指標としては以下が挙げられます。
※基礎が固まっていない状態で使用すると、解説を読んでも理解が追いつかず、学習効率が著しく低下するリスクがあります。
本シリーズを完全に習得した場合に到達が期待できるレベルは以下の通りです。
分析:本シリーズは、難関大入試の「スタートライン」に立つための参考書です。これを終えた後に、志望校の過去問や、さらに高難易度の問題集(『やさしい理系数学』『標準問題精講』など)へ接続することで、より高いレベルへと到達できます。
例題と演習題には、明確な役割と難易度の違いが存在します。
「1対1対応の演習」を最大限に活用するためには、適切な開始時期と学習ペースを把握することが重要です。以下に、志望校合格から逆算した理想的なスケジュールモデルを提案します。
本シリーズは、教科書レベルの基礎知識が定着していることを前提としています。そのため、多くの受験生にとって最適な開始時期は以下の通りです。
1冊を完璧に仕上げるまでの期間は、個人のペースによりますが、以下のペースが標準的です。
※あくまでモデルケースであり、他教科とのバランスや苦手分野にかける時間を考慮して、自分だけの学習計画を立てることが合格への鍵となります。
本シリーズの効果を最大化するためには、戦略的な学習計画が不可欠です。以下に4つのステップからなる学習プロセスを提案します。
Step 1:例題に取り組む(インプット重視)
まずは何も見ずに例題に挑戦します。15分程度考えても解法の方針が立たない場合は、解答・解説を熟読しましょう。重要なのは、なぜその解法に至るのか、思考のプロセスを完全に理解することです。解答を丸暗記するのではなく、「問題を解くための考え方」を学び取る姿勢が求められます。
Step 2:例題を完璧に再現する
解説を理解したら、今度は何も見ずに、自分の力で解答を最初から最後まで書き上げます。途中で詰まったり、論理の飛躍があったりした場合は、再度解説を読み込み、完璧に再現できるまで繰り返します。
Step 3:演習題に挑戦する(アウトプット重視)
例題が完璧になったら、対応する演習題に挑戦します。これは自力で解くための演習です。例題の解法を少し捻ったり、複数の知識を組み合わせたりする必要がある問題が多く、思考力が鍛えられます。すぐに諦めず、粘り強く考える経験が重要です。
Step 4:復習と定着
解けなかった問題、解答に自信がなかった問題には必ず印(例:△、×)をつけます。学習を進めながら、週末や月末に印のついた問題を解き直す日を設けましょう。2周目以降は印のついた問題を中心に復習することで、効率的に弱点を克服できます。全ての例題と演習題がスラスラ解ける状態を目指すのが理想です。
【塾講師のコメント】
この参考書で最も避けたいのは、「例題だけ解いて満足してしまう」ことです。演習題に取り組むことで初めて、学んだ知識が「使える知識」へと昇華します。学習ペースの目安としては、1日2~3セット(例題+演習題)を進め、1冊を3週間~1ヶ月で1周するのが標準的と考えられます。受験までの残り期間と、他教科とのバランスを考慮して計画を立てることが肝要です。
「1対1対応の演習」は入試標準レベルの優れた参考書ですが、同じレベル帯には他にも特徴の異なる良書が存在します。自分の学習スタイルや目的に合わせて最適な一冊を選ぶために、代表的な参考書との違いを理解しておきましょう。
| 参考書名 | 特徴 | こんな人におすすめ |
|---|---|---|
| 1対1対応の演習 | 例題と演習題のセットで「解法の核」を効率的に学べる。解説はやや簡潔だが、思考プロセスを重視。 | 質の高い問題を少数こなし、解法の本質を深く理解したい人。 |
| 標準問題精講 | 「精講」という詳細な解説が特徴。問題数は絞られているが、1問から得られる情報量が多い。やや難易度高め。 | 一つの問題に対して、じっくり時間をかけて多角的に考察したい人。 |
| CanPass 数学 | 近年の入試傾向を反映した問題選定。解説は比較的丁寧で、独学でも進めやすい。 | オーソドックスな入試標準問題を確実に解けるようにしたい人。 |
| 重要問題集(A問題) | 問題数が多く、網羅性が高い。A問題が標準レベルに該当。様々なパターンの問題に触れたい場合に有効。 | 多くの問題に触れて、解法の引き出しを増やしたい人。 |
【塾講師のコメント】
どの参考書を選ぶかよりも、「決めた1冊を完璧に仕上げる」ことの方が遥かに重要です。書店で実際に手に取り、解説のスタイルが自分に合っていると感じるものを選ぶのが、挫折しないための最良の方法と言えるでしょう。
「1対1対応の演習」を完璧にマスターすると、難関大学の入試問題を解くための強固な土台が完成します。その後の学習は、志望校のレベルに合わせて以下の2つのステップで進めるのが王道です。
Step 1:志望校の過去問演習
まずは志望校の過去問に挑戦し、現在の実力と合格点までの距離を正確に測りましょう。出題傾向(頻出分野、難易度、時間配分など)を肌で感じることで、今後強化すべき点が明確になります。
Step 2:必要に応じて応用レベルの問題集を追加
過去問演習で見つかった課題を克服するために、よりレベルの高い問題集を追加します。闇雲に手を出すのではなく、目的意識を持って選ぶことが重要です。
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全部解かず、例題だけを解くのはアリですか?
原則として、例題と演習題は必ずセットで解くことを強く推奨します。例題は解法の「インプット」、演習題はその解法を応用する「アウトプット」の役割を担っており、両方をこなして初めて知識が「使える」レベルに定着するからです。
ただし、以下のような特定の状況下では、例外的に例題のみに取り組む学習法も考えられます。
・高速で全範囲を総復習したい場合:受験直前期に、一度マスターした内容を忘れていないか確認するために、全範囲の例題だけをスピーディーに解き直す方法です。
・基礎固めの初期段階として:数学全体に苦手意識がある場合、まずは全分野の例題だけを完璧にし、入試数学の全体像を掴んでから、2周目で演習題に取り組むという段階的な使い方です。
【注意点】例題だけの学習では、初見の問題に対応する応用力や思考力は身につきません。あくまで限定的な使い方と割り切り、最終的には必ず演習題まで取り組む計画を立てることが、合格への必須条件だと考えてください。
いつから始めるのが良いですか?
高校3年生の夏休み前までに、主要科目の学習を終えるのが理想的なペースです。具体的には、教科書レベルの学習と、基礎的な問題集(基礎問題精講など)を終えた後、すぐさま取り組むのが最も効果的です。受験学年の4月から始めて、夏休み中に完成させ、秋以降は過去問演習に移行するというのが王道のスケジュールと考えられます。
「青チャート」などの網羅系参考書との違いは何ですか?
「青チャート」などが、解法パターンを幅広く「網羅」することを目指すのに対し、「1対1対応の演習」は、入試で使える「核となる解法」を深く掘り下げることを目的としています。そのため、問題数は絞られていますが、一問あたりの学習密度は高いと言えます。一般的には、「青チャート」などで基礎を固めた後に、「1対1対応の演習」で実践力を養うという接続が推奨されています。
解説が難しい(合わない)と感じる場合はどうすれば良いですか?
本シリーズの解答は、やや簡潔で、ある程度の数学的素養を前提としている場合があります。もし解説が理解しづらいと感じる場合は、そもそも基礎学力が不足している可能性があります。その際は、無理に進めず、より解説の丁寧な「基礎問題精講」などに戻ることを推奨します。また、同レベル帯の参考書として「CanPass(キャンパス)」や「重要問題集(A問題)」なども存在するため、書店で比較検討し、自分に合った解説スタイルのものを選ぶのが賢明です。
「1対1対応の演習」は、大学入試数学において、基礎力から応用力への橋渡しをするための極めて優れた問題集であると評価できます。以下に最終的な分析結果を要約します。
・教科書レベルを終え、次の1冊を探している。
・模試の偏差値が60前後で、もう一段階レベルアップしたい。
・難関国公立、早慶上理、GMARCH、関関同立などを目指している。
・解法の丸暗記から脱却し、数学的な思考力を養いたい。
・まだ教科書レベルの内容に不安がある。
・数学が苦手で、手厚い解説がないと学習を進められない。
・問題数をこなすことで安心感を得たいタイプ。
・共通テスト対策のみを目的としている。
結論として、本シリーズは正しいレベル感と目的意識を持って使用すれば、数学の能力を向上させるに適した一冊です。この記事がテキスト選びの参考になれば幸いです。