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この記事は、大学受験を控えた高校生を対象に、英文法参考書『大岩のいちばんはじめの英文法 超基礎文法編』(『大岩の英文法』)について、その内容、レベル感、効果的な活用法を分析し、参考書選びをサポートすることを目的としています。


慶應義塾大学経済学部経済学科3年生。
スタディコーチで勤務をしており、それ以前も小学生~大学受験生まで幅広い指導経験あり。
受験生の皆さんが損しないよう、お役立ち情報を日々発信していきたいと思っています!
『大岩のいちばんはじめの英文法』は、東進ハイスクールの人気講師である大岩秀樹先生によって執筆された、高校英文法の入門者向け講義形式の参考書です。その名の通り、「いちばんはじめに」手にとることを想定されており、英語に苦手意識を持つ受験生や、中学レベルの英文法から復習したいと考える学習者から絶大な支持を得ています。
| 項目 | 概要 |
|---|---|
| 著者 | 大岩 秀樹(東進ハイスクール・東進衛星予備校 英語科講師) |
| 出版社 | ナガセ(東進ブックス) |
| 対象レベル | 中学英語の復習~高校基礎レベル(大学受験の入口) |
| 形式 | 講義形式の解説 + 各講の確認問題 |
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本参考書が多くの受験生に選ばれる理由は、その徹底した「わかりやすさ」へのこだわりにあります。以下に、その具体的な特徴を事実ベースで記述し、アナリストとしての分析を加えます。
①徹底的に噛み砕かれた講義口調の解説
参考書全体が、大岩先生の授業をそのまま文章にしたかのような、親しみやすい講義口調で書かれています。難しい文法用語を避け、「カタマリ」といった独自の表現を用いて、英文の構造を直感的に理解できるよう工夫されています。
【塾講師のコメント】
このアプローチは、従来の無味乾燥な文法書の羅列とは一線を画します。特に英語アレルギーを持つ学習者にとって、心理的な抵抗感を和らげ、学習への第一歩を踏み出しやすくする効果は非常に大きいと考えられます。学習者を置いてきぼりにしないという強い意志が感じられます。
②品詞や文型など「英文のルール」の重視
第0講として「品詞」の説明から始まり、SVOCといった「文型」の理解を徹底的に重視しています。これは、個別の文法事項を学ぶ前に、英文を正しく読むための「骨格」を身につけることを目的としています。
【塾講師のコメント】
この構成は、感覚的な「なんとなく訳」から脱却し、論理的に英文を読解するための土台作りとして極めて合理的です。多くの受験生がつまずく長文読解や英文解釈は、この土台が盤石であるか否かにかかっています。大学受験英語の学習プロセスにおいて、最も重要でありながら見過ごされがちな部分を最初に固める戦略は、高く評価できます。
③情報を絞り、基礎に特化
本書は、高校英文法の全てを網羅しているわけではありません。大学受験で問われる文法項目のうち、最も土台となる「核」の部分に解説を絞っています。これにより、学習者は情報過多に陥ることなく、重要な基礎知識を確実に定着させることができます。
【塾講師のコメント】
「あれもこれも」と欲張らず、「これだけは絶対に」という核心部分にフォーカスする編集方針は、初学者の挫折を防ぐ上で賢明な判断です。この一冊で完結するのではなく、次のステップ(より網羅的な文法問題集など)へスムーズに接続するための「橋渡し」としての役割が明確に設計されています。
多くのメリットがある一方で、その特性ゆえの注意点も存在します。これらを事前に理解しておくことが、ミスマッチを防ぐ上で重要です。
・演習量が絶対的に不足している点
本書は講義が中心であり、各講の確認問題は、あくまで内容理解をチェックするための最低限の量しかありません。知識を定着させ、実戦で使えるレベルに引き上げるためには、別途、網羅系の文法問題集(例:『Next Stage』『Vintage』など)でのアウトプットが必須となります。
【塾講師のコメント】
本書を読んだだけで「文法は完璧になった」と誤解することが最も危険なパターンです。「わかる」と「できる」の間には大きな隔たりがあり、本書はその「わかる」段階をサポートするものです。「できる」段階へ進むための演習を怠れば、成績向上には繋がりません。
・これ一冊では大学受験の文法問題をカバーできない点
本書は基礎に特化しているため、私立大学の文法問題や、国公立大学の長文中で問われるような、より高度で細かい文法知識は掲載されていません。日東駒専・産近甲龍レベル以上を目指す場合、本書を踏み台にして、よりレベルの高い参考書へ進む必要があります。
・講義口調が合わない可能性
多くの学習者にはメリットとなる講義口調ですが、一部の学習者にとっては「砕けすぎている」「冗長に感じる」といった可能性も否定できません。簡潔で無駄のない解説を好む場合は、他の参考書が適しているケースもあります。
本書を最大限に活用するため、目標期間に応じた2つの具体的な学習プランを提案します。重要なのは期間内に終わらせることではなく、各講の内容を完璧に理解し、自分の言葉で説明できる状態にすることです。
【短期間で進めたい人向け】2週間で完成させる学習スケジュール
夏休みなど、まとまった学習時間が確保できる方向けのプランです。毎日コンスタントに進める必要がありますが、短期間で英文法の土台を固めることができます。
【ゆっくり進めたい人向け】1ヶ月でじっくり固める学習スケジュール
学校の授業や部活動と両立しながら進めたい方向けの、現実的なプランです。焦らず、着実に知識を定着させることを目指します。
本書の効果を最大化するための、推奨学習フローを提案します。
【STEP 1】講義部分を熟読し、理解に徹する(期間目安:1~2週間)
まずは無理に暗記しようとせず、「なぜそうなるのか」という理屈を理解することに集中します。特に第0講の品詞と、SVOCの概念は時間をかけて完璧に理解してください。各講の解説は声に出して読む「音読」が、理解度と集中力を高める上で効果的とされています。
【STEP 2】例文を完璧に説明できるようにする
講義中の例文は、文法のルールが凝縮された宝庫です。ノートに例文を書き出し、SVOCを振り、自力で日本語訳を書く練習を推奨します。最終的には、日本語訳を見て、元の英文を再現できるレベルを目指します。「なぜこの単語がこの位置に来るのか」「なぜこの形になるのか」を自分の言葉で説明できるようになることが重要です。
【STEP 3】確認問題を解き、理解度をチェックする
講義を読み、例文を分析した上で、確認問題に挑戦します。もし間違えた問題があれば、必ず講義部分に戻り、理解が曖昧だった箇所を特定し、再度読み込みます。このプロセスを繰り返すことで、知識の穴を塞いでいきます。
【STEP 4】次のレベルの参考書へ接続する
本書を2~3周し、内容を完璧に理解できたら、速やかに次のステップに進みます。一般的には、英文解釈の参考書(例:『入門英文解釈の技術70』など)や、網羅系の英文法問題集に進むのが王道のルートとされています。本書で得た「英文の骨格」を意識しながら取り組むことで、学習効果が飛躍的に高まります。
各種レビューサイトやSNSにおける評判を分析したところ、ポジティブな意見とネガティブな意見(注意喚起)は主に以下の点に集約されることが確認されました。
ポジティブな評判
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ネガティブな評判・注意点
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『大岩の英文法』は非常に優れた入門書ですが、同じレベル帯にも良質な参考書は存在します。参考書選びで後悔しないために、代表的なものを比較検討してみましょう。講義形式の参考書は、著者との相性(語り口や解説の切り口)が特に重要になります。
| 参考書名 | 特徴と『大岩』との違い |
|---|---|
| 高校英文法を ひとつひとつわかりやすく。 |
図やイラストが豊富で、視覚的に理解しやすい構成。見開き1ページで1テーマが完結するため、テンポよく学習を進めたい人向け。『大岩』よりもさらに噛み砕かれた説明が特徴。 |
| 肘井学の ゼロから英文法が 面白いほどわかる本 |
『大岩』と同じく講義形式だが、よりレイアウトが洗練されており、重要事項が色分けされていて見やすい。文法の「なぜ」を根本から解説するスタイルは『大岩』と共通している。 |
| 安河内の新・英語を はじめからていねいに |
同じ東進ブックスの講義形式参考書。キャラクターの対話形式で進むため、より物語を読むような感覚で学習できる。暗記すべきポイントが明確に示されているのが強み。 |
【塾講師のコメント】
どの参考書も初学者がつまずかないよう工夫されていますが、解説のアプローチは異なります。『大岩』が「ルールの理屈」を重視するのに対し、『ひとつひとつ』は「視覚的なわかりやすさ」、『肘井』や『安河内』はまた違った語り口の魅力があります。最終的には、書店で実際に数ページ読み比べてみて、「この先生の説明が一番しっくりくる」と感じたものを選ぶのが最も確実な方法です。
『大岩のいちばんはじめの英文法』で学んだ「英文の骨格」を本物の実力に変えるためには、適切な参考書へ接続することが不可欠です。本書はあくまで「インプット」と「基礎理解」の教材であり、大学受験で求められる「アウトプット能力」と「網羅性」を養うためには、次のステップに進む必要があります。ここでは、王道とされる2つの学習ルートを紹介します。
【ルート①】英文解釈で「読む精度」を高める
『大岩の英文法』で学んだSVOCやカタマリの概念を使い、一文一文を正確に和訳するトレーニングです。長文読解で「なんとなく」読む癖をなくし、論理的に文構造を把握する力を養います。全ての英語学習の土台となるため、基本的には全員が通るべきルートです。
▼代表的な参考書
【ルート②】網羅系問題集で「知識」を定着・拡充させる
4択問題などを通じて、文法・語法・イディオムの知識を網羅的にインプット&アウトプットします。私立大学の文法問題対策や、読解で問われる細かい知識の補強に必須です。『大岩の英文法』には載っていない発展的な内容も多く含まれます。
▼代表的な参考書
【塾講師のコメント】
理想的な進め方としては、まずルート①の英文解釈の参考書に接続し、英文を読むための土台を盤石にします。その後、ルート②の網羅系問題集に進むか、もしくは英文解釈と並行して網羅系問題集を進めるのが効率的です。いきなりルート②に進むと、問題の意図が理解できず消化不良に陥る可能性があるため、焦らずに解釈のステップを挟むことを強く推奨します。
Q.
この参考書は、どれくらいの期間で終わらせるべきですか?
A.
集中して取り組めば、2週間~1ヶ月程度で1周するのが一般的です。ただし、重要なのは期間ではなく、内容を完全に理解し、他人に説明できるレベルになることです。焦らず、自分のペースで完璧にすることを最優先してください。特に英語が苦手な場合は、じっくり時間をかけて2~3周することを推奨します。
Q.
『大岩の英文法』を終えた後、次は何をやれば良いですか?
A.
主に2つのルートが考えられます。①英文解釈の学習に進み、一文を正確に読む訓練を積むルート(例:『入門英文解釈の技術70』)。②網羅系の英文法問題集に進み、アウトプットを通じて知識の定着と拡充を図るルート(例:『Next Stage』『Vintage』)。一般的には、①で読解の精度を高めてから②に進むか、①と②を並行して進めるのが効率的とされています。
『大岩のいちばんはじめの英文法 超基礎文法編』は、その名の通り、大学受験英語の学習を開始する「第一歩」として、とてもよい参考書です。また、複雑な英文法へのハードルを下げ、その後の学習にも活きていくでしょう。
✓ 高校英文法の「核」となる部分を体系的に学べる。
✓本書だけで受験を乗り切れるわけではなく、あくまで土台作りの一冊である。
✓ 英語が苦手なら「買い」。ある程度得意なら不要の可能性も。
・英語に強い苦手意識があり、何から手をつけて良いかわからない高校生
・中学レベルの英文法から復習したいと考えている受験生
・これまで感覚で英語を読んできたが、成績が伸び悩んでいる生徒
・本格的な受験勉強を始める前の高1・高2生
・既に高校の英文法をある程度理解しており、偏差値60以上を安定してとれる生徒
・アウトプット(問題演習)を中心に学習を進めたい生徒
・簡潔で網羅的な解説書を好む生徒
最終的に、本参考書は「その後の学習効のための基礎作り」という明確な役割を持っています。この役割を正しく理解し、自身のレベルと目的に合致するかを判断した上で活用すれば、大学受験の英語の強力な出発点となるでしょう。