目次
この記事では、日本最古の私立理系大学の一つであり、「実力主義」の伝統で知られる東京理科大学について、全学部を比較・解説します。偏差値や入試情報はもちろん、各学部の特色、就職実績、そしてリアルな評判まで、多角的な視点から徹底解説します。この記事がが、あなたの後悔のない大学選びの参考となれば幸いです。

慶應義塾大学経済学部経済学科3年生。
スタディコーチで勤務をしており、それ以前も小学生~大学受験生まで幅広い指導経験あり。
受験生の皆さんが損しないよう、お役立ち情報を日々発信していきたいと思っています!
東京理科大学は、学部ごとにメインとなるキャンパスが異なります。学問分野だけでなく、立地や環境も大学生活を構成する重要な要素です。まずは基本情報を確認しましょう。
| 東京理科大学 基本情報 | |
|---|---|
| 大学名 | 東京理科大学 (Tokyo University of Science) |
| 設立 | 1881年 (東京物理学講義所として創立) |
| 学生数 | 約20,000名 |
| 公式サイト | https://www.tus.ac.jp/ |
| キャンパス | 所在地 | 所属学部・学年 | 最寄り駅 |
|---|---|---|---|
| 神楽坂キャンパス | 東京都新宿区 | 理学部第一部(数学、物理、化学、応用化学) / 経営学部(2年次以降) | 飯田橋駅、神楽坂駅 |
| 葛飾キャンパス | 東京都葛飾区 | 理学部第一部(応用物理) / 工学部 / 先進工学部 | 金町駅、京成金町駅 |
| 野田キャンパス | 千葉県野田市 | 薬学部 / 創域理工学部 | 運河駅 |
| 北海道・長万部キャンパス | 北海道山越郡 | 経営学部(1年次) | 長万部駅 |
塾講師のコメント
キャンパスの分散は理科大の大きな特徴です。特に経営学部は1年次を北海道の長万部で過ごす全寮制を採用しており、これは他大学にはないユニークな経験と言えます。一方で、都心で学びたい学生にとっては、野田キャンパスの立地がネックになる可能性も。オープンキャンパスなどを利用し、実際に足を運んで雰囲気を確かめることを強く推奨します。
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私立理系トップクラスの難易度を誇ります。学部・学科によって幅がありますが、全体的に高いレベルでの競争となります。ここでは代表的な予備校のデータを基にした偏差値と共通テスト得点率の目安を一覧で示します。
| 学部 | 学科 | 偏差値 (目安) | 共通テスト得点率 (A方式・目安) |
|---|---|---|---|
| 理学部第一部 | 数学科 | 60.0 – 62.5 | 80% – 83% |
| 物理学科 | 62.5 | 84% – 86% | |
| 化学科 | 60.0 | 80% – 82% | |
| 応用数学科 | 57.5 – 60.0 | 77% – 80% | |
| 応用物理学科 | 60.0 – 62.5 | 82% – 85% | |
| 工学部 | 建築学科 | 60.0 – 62.5 | 81% – 84% |
| 工業化学科 | 57.5 | 78% – 80% | |
| 電気工学科 | 57.5 – 60.0 | 80% – 82% | |
| 情報工学科 | 62.5 | 84% – 86% | |
| 機械工学科 | 60.0 | 82% – 84% | |
| 薬学部 | 薬学科 (6年制) | 60.0 – 62.5 | 82% – 84% |
| 生命創薬科学科 (4年制) | 57.5 – 60.0 | 80% – 83% | |
| 創域理工学部 (旧:理工学部) |
数理科学科 | 57.5 | 76% – 78% |
| 先端物理学科 | 57.5 | 76% – 78% | |
| 情報計算科学科 | 60.0 | 80% – 82% | |
| 生命生物科学科 | 57.5 – 60.0 | 79% – 82% | |
| 建築学科 | 60.0 | 81% – 83% | |
| 先進工学部 | 電子システム工学科 | 55.0 – 57.5 | 76% – 78% |
| マテリアル創成工学科 | 55.0 – 57.5 | 75% – 77% | |
| 生命システム工学科 | 57.5 | 78% – 80% | |
| 物理工学科 | 57.5 | 77% – 80% | |
| 機能デザイン工学科 | 55.0 – 57.5 | 76% – 79% | |
| 経営学部 | 経営学科 | 60.0 | 80% – 83% |
| ビジネスエコノミクス学科 | 60.0 | 81% – 84% | |
| 国際デザイン経営学科 | – (B方式のみ) | – | |
| 理学部第二部 (夜間) |
数学科 | 45.0 – 50.0 | 65% – 70% |
| 物理学科 | 45.0 – 50.0 | 65% – 70% |
※偏差値・得点率は各種予備校のデータを参考に作成したもので、年度や入試方式により変動します。あくまで目安としてください。
塾講師のコメント
競合大学: 早稲田大学の基幹・創造・先進理工学部、慶應義塾大学の理工学部が最上位の競合となります。これに次いで、上智大学理工学部、明治大学・中央大学・法政大学・立教大学などの理工系学部が併願校としてよく比較されます。国公立大学では、東京工業大学、筑波大学、横浜国立大学あたりが併願・比較対象となるでしょう。
狙い目: 偏差値だけ見れば、新設された学部や野田キャンパスの学科、理学部第二部などが相対的に低めに出ることがありますが、安易な選択は禁物です。理科大の教育内容はどの学部も高水準であり、入学後の学習は大変です。自分の学びたい分野と照らし合わせて慎重に選びましょう。
東京理科大学の一般選抜は多様ですが、主に以下の3方式が中心となります。
A方式(共通テスト利用):大学入学共通テストの成績のみで合否を判定。国公立大学との併願者が多く利用します。
B方式(大学独自試験):大学独自の試験のみで合否を判定。理科大を第一志望とする受験生の主戦場です。募集枠が最も多い方式です。
C方式(共通テスト・独自試験併用):共通テストの成績と大学独自の試験成績を総合して合否を判定します。
理科大の入試問題は、奇問・難問は少ないものの、理系単科大学らしく、各科目の本質的な理解と高い計算処理能力を問う良問が多いのが特徴です。
数学: 試験時間に対して問題数が多く、迅速かつ正確な計算力が求められます。特に数学IIIの微分・積分は頻出かつ合否を分ける重要分野です。教科書の章末問題レベルを完璧にした上で、標準的な問題集を繰り返し解き、解法を瞬時に引き出せるように訓練することが不可欠です。
英語: 理系テーマの長文読解が中心。文章構造は論理的で明快なものが多いですが、専門用語が含まれることも。設問自体は標準的ですが、速読力が求められます。単語・熟語・文法の基礎を固め、理系長文に多く触れておくことが対策の鍵となります。
物理: 力学と電磁気はほぼ必出。残りの1題が波動または熱力学から出題される傾向があります。現象の根本的な理解を問う問題が多く、公式の丸暗記だけでは対応できません。現象を図示したり、なぜその公式が成り立つのかを説明できるレベルまで理解を深めることが重要です。
化学: 理論化学の比重が高く、計算問題が多いのが特徴です。無機・有機も知識だけでなく、構造決定や反応機構など思考力を要する問題が出されます。計算のスピードと正確性を高める練習を積み、重要事項を漏れなく暗記することが高得点に繋がります。
「就職の理科大」と評される通り、産業界からの評価は非常に高く、有名企業への就職実績は抜群です。特に、大学で学んだ専門性を直接活かせるメーカー(電機、化学、自動車など)やIT企業への就職が目立ちます。また、大学院への進学率が高いのも大きな特徴です。
| 主要就職先(2023年度実績・順不同) | |
|---|---|
| 情報・通信 | NTTデータ、日立製作所、野村総合研究所、富士通、SCSK、NEC |
| メーカー | ソニーグループ、キヤノン、トヨタ自動車、本田技研工業、三菱電機、デンソー |
| 建設・インフラ | 清水建設、鹿島建設、大林組、JR東日本、東京電力 |
| 金融・コンサル | アクセンチュア、日本アイ・ビー・エム、みずほフィナンシャルグループ |
| 学部系統 | 大学院進学率 (目安) |
|---|---|
| 理学・工学・創域理工・先進工学系 | 50% – 70% |
| 薬学系 (生命創薬科学科) | 約80% |
| 経営学部 | 約5% |
塾講師のコメント
理系学部では大学院進学がキャリアのスタンダードになりつつあります。特に研究開発職や専門職を目指す場合、修士号はほぼ必須と考えてよいでしょう。学部卒業での就職ももちろん可能ですが、大学院進学を前提としたカリキュラムが組まれている面もあります。学部選びの段階から、大学院進学まで含めた6年間のスパンでキャリアプランを考えておくことが望ましいです。
特徴1:徹底した「実力主義」と卒業の質の保証
東京理科大学の代名詞とも言えるのが「実力主義」です。かつては「関門制度」と呼ばれる厳しい進級・卒業要件があり、留年率の高さで知られていました。現在では制度は緩和されたものの、安易な単位取得は許さないという風土は健在です。この厳しさが卒業生の質の高さを保証し、社会からの高い評価に繋がっています。「入るのはそこそこ、出るのは難しい」と言われた伝統は、今もなお受け継がれていると言えるでしょう。
特徴2:分野の壁を越える学際的な教育・研究環境
近年の理科大は、従来の学問分野の枠組みを超えた教育・研究に力を入れています。2023年に理工学部から名称変更した「創域理工学部」は、その象徴です。「創域」という言葉には、理学と工学が融合し、横断的な共創を通じて新しい領域と価値を創造するという意味が込められており、社会が抱える複雑な課題に対応できる人材の育成を目指しています。
特徴3:社会実装を見据えた産学連携
企業との共同研究や連携講座が非常に活発です。葛飾キャンパスには「研究推進機構 総合研究院」が設置され、多くの企業が研究室を構えています。学生が早期から実社会の課題に触れ、最先端の研究開発に参加できる機会が豊富に用意されている点は、大きな魅力と言えます。
ここでは、各学部の特色をより詳しく見ていきましょう。
自然科学の根源を探求する、理科大の看板学部。数学・物理・化学といった基礎科学分野を深く学びます。卒業生の多くが大学院に進学し、研究者や専門性の高い技術者として活躍しています。特に物理学科は最難関として知られています。
「ものづくり」を通じて社会に貢献することを目指す学部。建築、機械、電気、情報といった伝統的な工学分野を網羅しています。産業界との結びつきが強く、実践的な教育が特徴です。中でも情報工学科や建築学科は人気が高く、難易度も高めです。
薬剤師を養成する6年制の「薬学科」と、創薬研究者の育成を目指す4年制の「生命創薬科学科」の2学科体制。薬剤師国家試験の合格率は全国トップクラスを誇ります。生命科学分野の研究レベルも非常に高いです。広大な野田キャンパスで、じっくりと研究に打ち込める環境です。
理工学部から発展的に改組された、理科大で最も学生数が多い学部。理学と工学の垣根を越えた10の学科で構成され、学際的な学びを推進しています。社会のニーズに合わせた柔軟な教育課程が特徴で、幅広い分野への進路が開かれています。
既存の工学分野では対応が難しい、生命、物質、情報、環境といった新しい領域の課題解決を目指す学部です。分野横断的なカリキュラムで、未来の産業を担うエンジニアを育成します。他の工学系学部と比べて、より複合的・先進的なテーマを扱います。
理科大唯一の文系学部ですが、その教育内容は理系的アプローチを重視しているのが最大の特徴です。統計学やデータサイエンスを駆使して経営課題を解決する能力を養います。1年次は北海道・長万部で全寮制の基礎教育、2年次からは都心の神楽坂で専門教育を受けます。
夜間に開講されている学部で、「働きながら学ぶ」社会人学生や、昼間の学部とは異なる環境で学びたい学生が在籍しています。第一部と同じ神楽坂キャンパスで、同じ教授陣から質の高い教育を受けられるのが魅力です。学費も安く設定されており、経済的な負担を抑えたい学生にとっても有力な選択肢です。
東京理科大学は、学術界、産業界をはじめ、様々な分野で活躍する人材を輩出しています。その筆頭が、2015年にノーベル生理学・医学賞を受賞した大村智 博士(大学院理学研究科修了)です。
その他にも、多くの大手企業の創業者や経営者、技術者を輩出しており、社会の発展に大きく貢献しています。
ここでは、大学の良い点と、人によっては気になるかもしれない点を両論併記で紹介します。
良い点(ポジティブな評判)
・就職活動で非常に有利: 「理科大ブランド」は企業からの信頼が厚く、特に推薦応募では有利に働くことが多い。OB・OGのネットワークも強力。
・論理的思考力が身につく: 課題やレポート、試験が多く、論理的に物事を考える訓練が徹底的にできる。卒業する頃には相当な力がついている。
・真面目で優秀な学生が多い: 学問に対して真摯な学生が多く、互いに高め合える環境がある。グループワークなどでも協力しやすい。
・研究設備が充実している: 特に大学院レベルの研究設備は国内でもトップクラス。最先端の研究に打ち込める。
気になる点(ネガティブな評判)
・とにかく忙しい: 課題、実験、レポートの量が多く、自由な時間は他大学に比べて少ない傾向にある。アルバイトやサークル活動との両立には工夫が必要。
・キャンパス間の移動: 複数のキャンパスで授業が開講される場合や、サークル活動などでキャンパス間の移動が不便に感じることがある。
・地味なイメージ: いわゆる「キラキラした大学生活」をイメージしているとギャップを感じるかもしれない。学生の気質は全体的に堅実で真面目。
・立地: 野田キャンパスは都心からのアクセスが良いとは言えず、一人暮らしをする学生も多い。周辺環境の好みは分かれるところ。
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東京理科大学のこれまでの情報を踏まえ、どのような学生におすすめできるか、また、どのような学生には他の選択肢も考えられるかをまとめます。
まず、評価のためのポイントをまとめます。
情報の網羅性: 基礎科学から先進工学、さらにはデータサイエンスを駆使する経営学まで、理系を軸とした幅広い学問領域をカバーしている。
ミスマッチの防止: 「実力主義」の校風は、卒業後の高い評価に繋がる一方、楽な大学生活を望む学生には不向き。学業への強い意欲が必須である。
客観的な比較検討: 偏差値では早慶理工に次ぐ私立理系トップの地位を確立。研究力や就職実績では、一部の国公立大学をも凌駕する競争力を持つ。
具体的な目標設定の支援: 入試問題は標準的な良問が多く、基礎を徹底的に固めることが合格への最短ルート。付け焼き刃の知識では通用しない。
納得感のある意思決定: 卒業後のキャリア、特に専門性を活かした就職や研究者への道を考えているならば、これ以上ない環境の一つと言える。
【この大学を非常におすすめできる生徒】
特定の科学技術分野に強い探究心を持ち、大学でとことん学問に打ち込みたい生徒。目標達成のためなら、地道な努力を厭わない真面目さと忍耐力を持つ生徒。大学のブランドや知名度だけでなく、卒業後の社会での確かな実力と評価を重視する生徒。
【別の選択肢も検討すべき生徒】
学問よりもサークル活動やアルバイトなど、キャンパスライフの華やかさを最優先したい生徒。手厚いサポートがないと勉強のモチベーションを維持するのが難しい生徒。都心の一等地のキャンパスで4年間を過ごしたいという希望が強い生徒(学部による)。