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大学受験において、数学の「計算力」は合否を分ける極めて重要なスキルです。多くの受験生が「わかっていたはずなのに、計算ミスで失点した」「時間が足りなくて最後まで解けなかった」という悔しい経験をしています。今回、私たちスタディ・アナリティカが分析するのは、そんな受験生の悩みを根本から解決するために生まれた一冊、『合格る計算 数学Ⅰ・A・Ⅱ・B』です。
本書は単なる計算ドリルではありません。計算を「作業」から「戦略」へと昇華させ、速く、正確に、そして美しく解くための技術と思考法を授けてくれる、計算に特化した指南書です。本記事では、その特徴から効果的な使い方、ライバル参考書との比較まで、深掘りしていきます。

慶應義塾大学経済学部経済学科3年生。
スタディコーチで勤務をしており、それ以前も小学生~大学受験生まで幅広い指導経験あり。
受験生の皆さんが損しないよう、お役立ち情報を日々発信していきたいと思っています!
| 書名 | 合格る計算 数学Ⅰ・A・Ⅱ・B |
| 著者 | 広瀬 和之 |
| 出版社 | 文英堂 |
| 対象レベル | 教科書基礎~入試標準レベル |
| 値段 | 1,320円(税込) |
| 公式リンク | [出版社の書籍紹介ページなど] |
本書の最大の特徴は、計算テクニックを単なる暗記事項としてではなく、「なぜそのように計算するのか」という根本原理から解説している点にあります。全10章56テーマで構成され、各テーマは見開き完結型で学習しやすくなっています。
左ページ:計算のポイントやテクニック、そして「やってはいけない計算」が具体例と共に解説されます。特に「やってはいけない計算」は、多くの受験生が陥りがちな非効率な方法を指摘しており、自身の計算の癖を見直す良い機会となります。
右ページ:左ページで学んだテクニックを定着させるための練習問題が配置されています。問題数も適度で、無理なく継続できる構成です。
【塾講師のコメント】
この「原理原則の解説」と「やってはいけない計算」の組み合わせは、教育的観点から見て非常に優れています。ただ速いだけのテクニックは応用が利きませんが、本書のように背景を理解することで、初見の問題にも対応できる本質的な計算力が身につきます。計算を「頭を使わない作業」と捉えている生徒ほど、本書から得られる衝撃は大きいでしょう。
本書を通して得られる学力は、主に以下の3点です。
1. 計算速度の向上:無駄な計算を省き、最適な手順を選ぶことで、解答時間が大幅に短縮されます。
2. 計算精度の向上:計算ミスが起こりやすいポイントを事前に把握し、検算しやすいシンプルな式変形を学ぶことで、ケアレスミスが激減します。
3. 数学的思考力:式を俯瞰し、最も効率的な解法を見抜く力が養われ、応用問題への対応力も高まります。
【こんな受験生におすすめ】
・模試で計算ミスによる失点が多い人
・時間が足りず、いつも最後まで解ききれない人
・数学の成績をもう一段階レベルアップさせたい人
・難関大学を目指しており、高度な計算処理能力が求められる人
本書の効果を最大化するための使い方を提案します。
STEP1:毎日コツコツ進める
1日1~2テーマを目安に、毎日継続して取り組むのが理想です。一気に進めるよりも、毎日計算に触れることで、テクニックが体に染みつきます。
STEP2:解説を熟読し、再現性を意識する
問題を解くだけでなく、左ページの解説をしっかり読み込みましょう。なぜそのテクニックが有効なのかを自分の言葉で説明できるレベルまで理解することが重要です。そして、他の問題集を解く際にも、本書で学んだ計算方法を意識的に使ってみましょう。
STEP3:間違えた問題は必ず復習
間違えた問題は、自分の計算の弱点です。印をつけ、数日後や一週間後にもう一度解き直しましょう。弱点を潰すことで、確実な得点力に繋がります。
『合格る計算』の最大の強みは、計算における「思考のプロセス」を言語化し、体系化した点にあります。多くの計算ドリルが反復練習によるパターンの暗記に終始する中、本書は「どうすれば楽に計算できるか」「どうすればミスを防げるか」という戦略的視点を受験生に与えてくれます。この視点は、単に計算問題が速く解けるようになるだけでなく、数学という科目全体の捉え方を変える可能性を秘めています。
計算力向上を目的とする参考書はいくつか存在します。ここでは代表的な2冊と『合格る計算』を比較分析します。
| 比較項目 | 本書:合格る計算 | カルキュール数学 | 数学の計算革命 |
|---|---|---|---|
| コンセプト | 計算の「技術」と思考法を学び、質を高める | 反復練習による計算パターンの定着で、量をこなす | 入試問題ベースで実践的な計算力を養成する |
| 解説の詳しさ | 非常に詳しい。「なぜ」を重視 | 最低限。解法がわかる程度 | 詳しいが、問題解説が中心 |
| 問題量 | 標準的 | 非常に多い | 標準的 |
| 主な目的 | 計算の効率化とミス防止 | 基礎計算力の徹底的な定着 | 得点に直結する計算テクニック習得 |
【塾講師のコメント】
3冊は似ているようで全く目的が異なります。「合格る計算」は0を1にする、つまり計算への意識改革を促す本。「カルキュール」は1を10にする、つまり定着のためのドリル。「計算革命」は10を100にする、つまり入試本番で使える武器を磨く本です。自分の今の課題が「そもそも計算の工夫の仕方がわからない」のであれば『合格る計算』が最適と言えるでしょう。
本書は計算力向上の特効薬となり得ますが、注意点もあります。まず、本書は数学の各分野の基本的な公式や定理をすでに学習し終えていることが前提となります。三角関数の公式や微積分の計算ルールなどを知らない状態で始めても、効果は半減してしまいます。必ず、教科書や網羅系参考書で一通りの学習を終えてから手に取るようにしてください。あくまで「土台の上に乗せる応用技術」という位置づけです。
“これまでいかに自分が無駄な計算をしていたか思い知らされた。特に積分計算のテクニックは感動的。もっと早く出会いたかった一冊です。”
“これを毎日1テーマずつ続けただけで、模試の数学の時間が15分余るようになった。計算ミスもほとんどなくなり、見直しに時間をしっかり使えるようになったのが大きい。”
“内容は素晴らしいが、一周するのに意外と時間がかかる。夏休みなど、まとまった時間がある時に一気にやるのが良いかもしれない。”
“当たり前のことも書いてあるという意見もあるが、その当たり前ができていないから点数を落としていることに気づかされた。”
この参考書はいつから始めるのがベストですか?
高校2年生の終わりから高校3年生の夏休み前までに一通り終えるのが理想的です。数学ⅠAⅡBの全範囲の基礎学習を終えたタイミングで始め、本格的な演習に入る前に計算の土台を固めておくことで、その後の学習効率が大きく向上します。
数学Ⅲ版はありますか?
はい、『合格る計算 数学Ⅲ』も出版されています。理系で数Ⅲまで必要な受験生は、本書と合わせて取り組むことで、複雑な計算が要求される数Ⅲの学習をスムーズに進めることができます。
『合格る計算 数学Ⅰ・A・Ⅱ・B』は、単なる計算ドリルではなく、数学の得点力を根底から支える「計算戦略」を学ぶための投資と言える一冊です。計算を軽視し、ただ漫然と問題を解いているだけでは、決して到達できない高みへと導いてくれます。
特に、「基礎は理解しているはずなのに、なぜか点数が伸び悩んでいる」「難関大学に合格するために、ライバルと差をつけたい」と考えている受験生にこそ、強くおすすめします。本書で計算の質を劇的に向上させ、盤石な土台の上で応用問題に挑戦することで、合格の可能性は大きく広がるはずです。