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今回は、数ある数学参考書の中でも最難関レベルに位置する『数学Ⅰ+A+Ⅱ+B+ベクトル 上級問題精講 改訂版』(以下、本書)を、徹底的に分析していきます。難関大学を目指すすべての受験生にとって、この参考書が本当に必要な一冊なのか、その実力と使い方を明らかにします。

慶應義塾大学経済学部経済学科3年生。
スタディコーチで勤務をしており、それ以前も小学生~大学受験生まで幅広い指導経験あり。
受験生の皆さんが損しないよう、お役立ち情報を日々発信していきたいと思っています!
| 書名 | 数学Ⅰ+A+Ⅱ+B+ベクトル 上級問題精講 改訂版 |
| 著者 | 長崎 憲一 |
| 対象レベル | 旧帝大、早慶、医学部などの最難関大学志望者 |
| 値段 | 1,540円(税込) |
| 公式リンク | [旺文社 公式サイトへ] |
本書は、受験数学の最高峰に位置する問題集であり、その構成は「問題」「精講」「解答」の3部構成となっています。特に「精講」の部分が本書の核であり、単なる解法パターンの暗記ではなく、問題の背景にある数学的思考プロセスや、なぜその解法に至るのかという根本的な理解を促すように作られています。
【塾講師のコメント】
「精講」は、いわば一流講師によるマンツーマンの解説です。多くの受験生が「なぜそうなるのか」で躓くポイントを先回りして解説しており、数学的な思考の「型」を身につける上で非常に効果的です。この部分をじっくり読み込むかどうかが、本書の効果を最大化する鍵となります。
本書のレベルは、大学受験数学の参考書の中で最上位に位置します。偏差値で言えば、最低でも65以上が目安となり、教科書レベルの基礎事項はもちろん、標準的な入試問題は一通り解ける実力があることが前提となります。基礎が固まっていない状態で手を出すと、ほとんどの問題が解けず、挫折の原因となる可能性が非常に高いです。
本書を完璧に仕上げることで、最難関大学の入試で出題される、初見では手も足も出ないような複雑な問題に対しても、筋道を立てて解答を構築する能力が身につきます。具体的には、複数の分野にまたがる融合問題や、高度な発想力を要求される問題への対応力が格段に向上します。
【こんな人におすすめ】
・旧帝大、東工大、一橋大、早慶、医学部といった最難関大学を目指す受験生
・『標準問題精講』などの標準レベルの問題集を既に完成させている受験生
・数学を得点源にし、他の受験生に圧倒的な差をつけたいと考えている受験生
本書は単に問題を解き進めるだけでは効果が半減します。以下のステップを意識して取り組むことを推奨します。
ステップ1:自力で解く(時間をかけて)
まずは時間を計らず、30分以上かけても良いので、自分の持てる知識を総動員して問題に挑戦してください。ここでの試行錯誤が思考力を鍛えます。
ステップ2:「精講」を熟読する
解答を見る前に、必ず「精講」を読み込みます。自分がどこまで考えられて、何が足りなかったのかを確認し、問題へのアプローチ方法を学びます。
ステップ3:解答を理解し、再現する
解答を読み、論理の流れを完全に理解します。その後、何も見ずに自分の手で解答を再現できるか確認しましょう。
ステップ4:繰り返し解く
一度解けただけでは定着しません。1〜2週間後、さらに1ヶ月後など、期間を空けて繰り返し解き、完全に自分のものにしてください。
本書の最大の強みは、前述の通り「精講」にあります。他のハイレベル問題集が単に難問と解答を羅列する傾向にある中、本書は一貫して「なぜその発想に至るのか」という思考プロセスを重視しています。これにより、未知の問題に対峙した際の「考える力」そのものを根本から鍛え上げることができるのです。これは、単なる解法暗記型の学習では決して到達できない領域です。
難関大志望者が本書とよく比較検討する参考書として、『新数学演習』と『やさしい理系数学』が挙げられます。それぞれの特徴を比較してみましょう。
| 比較項目 | 本書(上級問題精講) | 新数学演習 | やさしい理系数学 |
|---|---|---|---|
| コンセプト | 思考プロセスの言語化と定着 | 圧倒的な問題量と最高難易度の演習 | 標準から発展への橋渡しと丁寧な解説 |
| 問題の難易度 | 非常に高い | 最高レベル(本書以上も多数) | 高い(本書よりやや易しめ) |
| 解説の詳しさ | 「精講」が非常に詳しい | 比較的簡潔で、ある程度の実力前提 | 非常に丁寧で、別解も豊富 |
| 到達目標 | 東大・京大・医学部で合格点を取る力 | 東大・京大理系上位合格、数学オリンピックレベル | 旧帝大・早慶理工レベルで安定させる力 |
【塾講師のコメント】
純粋な難易度と演習量では『新数学演習』に軍配が上がりますが、あそこまで必要な受験生はごく少数です。一方で、『やさしい理系数学』は解説が非常に丁寧で、本書への橋渡しとしても最適です。本書『上級問題精講』は、この2冊の間に位置し、思考の深め方と実戦的な難易度のバランスが最も優れている一冊と言えるでしょう。
本書に取り組む前に、最低でも『基礎問題精講』および『標準問題精講』、あるいは同等レベルの網羅系参考書(例:青チャート、Focus Goldなど)の例題レベルは完璧にマスターしている必要があります。これらの知識が曖昧なままでは、「精講」を読んでも理解が追いつきません。また、問題数が限られているため、演習量を確保したい場合は、過去問や他の問題集と併用する必要があります。
“これのおかげで、模試の最後の問題が解けるようになった。『精講』が本当に素晴らしく、数学の見方が変わった。医学部志望者には必須だと思う。”
“解説が丁寧で、なぜその解法を使うのかという部分まで書かれているので、応用力が身についた。この一冊を信じてやり込んでよかった。”
“標準問題精講が終わったからと手を出したが、レベルが違いすぎて心が折れた。もっと基礎を固めてからやるべきだったと後悔している。”
“問題数が少ないので、これ一冊だけだと少し不安が残る。過去問と並行して進めるのが前提だと感じた。”
この参考書はいつから始めるのがベストですか?
高校3年生の夏休み以降、もしくは既卒生が基礎・標準レベルを固め終えた段階で始めるのが一般的です。焦って早くから手を出す必要はありません。数学Ⅲの範囲まで含めて、標準レベルの問題演習が一通り完了していることがスタートの目安です。
数学Ⅲ版は別に買う必要がありますか?
はい、必要です。本書は「数学Ⅰ+A+Ⅱ+B+ベクトル」を扱っており、理系最難関大学で非常に重要な「数学Ⅲ」の範囲は含まれていません。別途『数学Ⅲ 上級問題精講』を購入し、取り組む必要があります。
『数学 上級問題精講』は、最難関大学の合否を分ける一問を解ききるための「思考力」を鍛え上げる、最高レベルの参考書です。その核心である「精講」は、単なる知識の確認に留まらず、数学という学問の深層に触れる体験を提供してくれます。
しかし、そのレベルの高さから、使う人を選ぶ一冊であることも事実です。十分な基礎力と標準レベルの問題解決能力を身につけた上で、数学を絶対的な武器にしたいと考える、向上心溢れる難関校志望の受験生にのみ、私たちはこの一冊を強く推奨します。正しく使えば、あなたの数学力を合格ラインのはるか上へと引き上げてくれる、最高のパートナーとなるでしょう。