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今回は、多くの高校生が対策に悩む共通テスト英語リスニングの定番書、『きめる!共通テスト 英語リスニング 改訂版』(Gakken)について、客観的なデータと指導経験に基づき、徹底的に分析していきます。
「リスニングが苦手…」「対策を始めたいけど、どの参考書がいいか分からない」という高校生の皆さんは、ぜひ参考にしてください。

慶應義塾大学経済学部経済学科3年生。
スタディコーチで勤務をしており、それ以前も小学生~大学受験生まで幅広い指導経験あり。
受験生の皆さんが損しないよう、お役立ち情報を日々発信していきたいと思っています!
まずは、本書がどのような参考書なのか、基本的な情報から見ていきましょう。
| 書名 | きめる!共通テスト 英語リスニング 改訂版 |
| 著者 | 肘井 学 |
| 対象レベル | 共通テスト対策(基礎~標準) |
| 値段 | 1,870円(税込) ※2025年10月時点 |
| 公式リンク | [Gakkenサイトの書籍紹介ページ)] |
本書は、共通テストのリスニング対策に必要な要素を網羅的に扱った参考書です。主な特徴は以下の通りです。
1. 全大問の形式を網羅した解説と演習:
共通テストリスニングで出題される全ての大問形式(短い発話、会話、図表、講義など)について、「どう解くか」という戦略(解法)と「何を聞き取るべきか」というポイントが詳しく解説されています。各セクションに演習問題も配置されています。
2. 「なぜ聞き取れないか」を解消する解説:
単なる問題の答え合わせに留まらず、スクリプト(放送文)、和訳、そして「聞き取りのポイント」が詳細に解説されています。特に、音声変化(リエゾンやリダクション)など、日本人が苦手としやすいポイントへの言及が手厚いのが特徴です。
3. オリジナル模試2回分:
巻末には、本番形式のオリジナル模試が2回分収録されており、実践的な演習と時間配分の確認が可能です。
4. 音声アクセス:
音声は専用アプリ「Gakken OTO-App(オトアップ)」またはダウンロードで対応しており、スマートフォンで手軽に学習できます。
本書のレベルは「共通テスト対策の入門~標準」です。高校基礎レベルの英単語(例:『ターゲット1400』や『システム英単語Basic』レベル)と英文法の知識が一通り終わった段階で取り組むのが最適です。
偏差値で言えば、模試で50前後の生徒が、共通テスト本番で6割~8割を目指すための土台作りに最適な一冊と言えます。
【塾講師のコメント】
「きめる!」シリーズは、全体的に解説が非常に丁寧なのが特徴です。リスニングが苦手な生徒は、「なんとなく聞こえなかった」で終わらせがちですが、本書は「なぜ聞き取れなかったのか」(音声変化か、単語を知らなかったのか、読み上げ速度か)を特定する手助けをしてくれます。独学でリスニング対策を始める高校生にとって、最初の「指導書」として非常に心強い存在です。
本書をやり込むことで、以下の学力が身につきます。
得られる学力:
・ 共通テスト特有の設問パターンへの対応力
・ 数字、場所、時間、主張の要点などを聞き取るスキル
・ 英語特有の音声変化(つながる音、消える音)への慣れ
・ 図表やグラフと音声を連動させて情報を処理する能力
おすすめな人:
・ これから本格的に共通テストのリスニング対策を始める高校生
・ リスニングの基礎を固めたいが、何から手をつけていいか分からない人
・ 解説が詳しく、独学でも進めやすい参考書を求めている人
・ 模試でリスニングの点数が安定しない(特に5割~6割)人
本書の効果を最大化するための学習ステップを提案します。
Step 1: まずは自力で解く
必ず時間を計り、本番のつもりで演習問題を解きます。この時、聞き取れなかった箇所や自信のない選択肢に印をつけておきます。
Step 2: 丸付けと「なぜ」の分析
答え合わせをします。間違えた問題について、解説を読む前に「なぜ間違えたのか」(聞き間違えたのか、そもそも単語を知らなかったのか、集中力が切れたのか)を自己分析します。
Step 3: 解説とスクリプトの熟読
解説を読み込み、「聞き取りのポイント」を確認します。スクリプトと和訳を見ながら、もう一度音声を聞き、自分が聞き取れなかった箇所がどの単語やフレーズだったのかを特定します。
Step 4: 音読・シャドーイング
スクリプトを見ながら、音声に合わせて音読(オーバーラッピング)をします。慣れてきたら、スクリプトを見ずに音声の少し後を追いかけて発音する「シャドーイング」を行います。これにより、耳と口が英語のスピードとリズムに慣れていきます。
Step 5: オリジナル模試
全範囲の学習が終わったら、巻末の模試で実力を測り、苦手な大問を再復習します。
本書の最大の強みは、「聞き取るための技術(コツ)」を言語化して丁寧に解説している点です。
多くの参考書が「問題演習+解説(スクリプト訳)」であるのに対し、本書は「どうすれば聞き取れるようになるか」という方法論、例えば「数字を聞き取る際は、単位や桁に注意する」「アメリカ英語とイギリス英語の発音の違い」といった、受験生が知りたい具体的なアドバイスが豊富です。この「指導の手厚さ」が、他の演習中心の参考書との大きな違いです。
ここでは、共通テストリスニング対策でよく比較される他の2冊と並べて、本書の立ち位置を明確にします。
【塾講師のコメント】
どの参考書も良書ですが、タイプが異なります。
・『きめる!』(本書): 解説が最も丁寧で「なぜ」を解消したい人向け。
・『集中講義』: 最も薄く、短期間で全形式を1周したい人向け。
・『面白いほど』: 講義形式の読み物として分かりやすく、読み進めやすさを重視する人向け。
ペルソナである「高校生」が、もし「じっくり基礎から固めたい」のであれば本書が、「部活で時間がなく、秋から短期間で仕上げたい」のであれば『集中講義』が選択肢になるでしょう。
| 比較項目 | 本書(きめる!) | (集中講義) | (面白いほど) |
|---|---|---|---|
| コンセプト | 聞き取りの「コツ」と解法を学ぶ総合対策書 | 短期間(10日間)で要点を押さえる短期集中書 | 講義形式で「解き方」をインプットする理解本 |
| 解説の詳しさ | ◎ (非常に丁寧) | △ (要点中心) | ○ (講義形式で丁寧) |
| 演習量(模試除く) | ○ (標準的) | △ (やや少なめ) | ○ (標準的) |
| 到達目標点 | 6~8割の安定 | 6割の確保 | 7~8割の安定 |
| おすすめな人 | 独学で基礎から固めたい人 | 時間がない人、要点だけ知りたい人 | 読み物として理解を深めたい人 |
必要な前提知識:
前述の通り、中学レベル~高校基礎レベルの英単語と英文法は必須です。これらが曖昧なまま本書に取り組んでも、「単語が分からないから聞こえない」状態になり、効果が半減します。必ず単語帳や文法書と並行して進めてください。
使用上の注意点:
本書は「対策書」としては非常に優秀ですが、演習「量」だけで見ると標準的です。共通テストのリスニングは「慣れ」も非常に重要です。本書で解法と聞き取りのコツをマスターした後は、必ず『共通テスト過去問』や『共通テスト実践模試(予想問題集)』などで、演習量を確保する必要があります。
当機関で収集した、本書利用者(高校生・既卒生)の声を分析しました。
“音声変化の解説がとても分かりやすかった。今まで何となく聞き流していた部分が、なぜそう聞こえるのか理論的に理解できた。”(高3・男子)
“解説が丁寧で、独学でも全く困らなかった。リスニングが苦手だったが、この1冊を終えて模試で7割を超えられた。”(高3・女子)
“問題数がもう少し多いと嬉しかった。基礎は固まったが、演習は別で買い足す必要を感じた。”(既卒生)
“基礎ができている人には、解説が少し冗長に感じるかもしれない。演習だけしたい人には向かないかも。”(高3・男子)
この参考書はいつ頃から始めるのがベストですか?
高校3年生の夏休み、または遅くとも秋(9月~10月)には始めたいです。基礎的な単語・文法の学習が終わったタイミングで、リーディング対策と並行して進めるのが理想です。
音声のスピードは本番と同じですか?
はい、本番の読み上げ速度に準拠して作成されています。ただし、専用アプリでは再生速度を変更できる機能もあるため、最初は少しゆっくり聞いて慣れ、最終的には1.0倍速で聞き取れるようにトレーニングすると効果的です。
『きめる!共通テスト 英語リスニング 改訂版』は、「独学でリスニングの基礎を徹底的に固めたい」と考える受験生にとって、現時点で最も信頼できる一冊の一つです。
「なぜ聞き取れないのか」の原因を特定し、その対策を具体的に指導してくれる「丁寧さ」は、他の参考書を凌駕しています。
【塾講師からの最終アドバイス】
ペルソナとして設定された「高校生」の皆さんにアドバイスです。リスニングは、才能ではなく「正しいトレーニングの量」で決まります。本書は、その「正しいトレーニングの方法」を教えてくれる教科書です。
もしあなたが「リスニングは苦手だけど、しっかり対策して武器にしたい」と考えているなら、本書を強くおすすめします。本書で解法を学び、徹底的に音読とシャドーイングを繰り返した後、過去問演習に進んでください。着実なスコアアップが期待できるはずです。