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こんにちは。教育専門リサーチ機関『エデュケーション・インサイト』所属、塾講師の佐藤です。本日は、芝浦工業大学(以下、SIT)について、志望者の皆さんが知りたい情報を徹底的に分析していきます。
SITは、「四工大」(芝浦工業大学、東京都市大学、東京電機大学、工学院大学)の中でも、偏差値・研究実績・就職先のいずれにおいても筆頭格と目される、非常に評価の高い私立理工系大学です。近年は文部科学省の「スーパーグローバル大学創成支援(SGU)」にも採択され、国際化と実践的な教育(実学)に力を入れています。
このレポートでは、SITのキャンパス情報、入試の難易度、学びの特色、そしてリアルな就職実績まで、中立的な立場で深く掘り下げていきます。
【塾講師からのコメント】
SITを理解する上で最初の重要ポイントは、「学部・学年によって学ぶキャンパスが異なる」ことです。メインとなる「豊洲キャンパス」は都心の最新鋭設備、「大宮キャンパス」は広大な敷地でのびのびと基礎を学べる環境です。志望する学部学科がどちらのキャンパスで学ぶのか、しっかり確認しておきましょう。
まずは大学の基本データと、通学に関わるキャンパス情報を確認します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 大学名 | 芝浦工業大学 (Shibaura Institute of Technology) |
| 設置学部 | 工学部、システム理工学部、デザイン工学部、建築学部 |
| 豊洲キャンパス | 所在地: 東京都江東区豊洲 アクセス: 東京メトロ有楽町線・ゆりかもめ「豊洲駅」から徒歩約7~9分 使用学部: 工学部(3・4年)、デザイン工学部、建築学部 |
| 大宮キャンパス | 所在地: 埼玉県さいたま市見沼区 アクセス: JR宇都宮線「東大宮駅」からスクールバス約5分 使用学部: 工学部(1・2年)、システム理工学部 |
| 学生数 | 約9,000名(大学院含む) |
SITの入試は、理工系大学を目指す受験生にとっての「標準〜やや難」レベルに位置付けられます。
学部学科によりますが、偏差値は55.0〜62.5の範囲に広く分布しています。特に建築学部やデザイン工学部、工学部の情報系学科は人気が高く、偏差値も高めに出る傾向があります。
ライバル校としては、MARCHの理工系学部(明治・中央・法政・青学・立教)や、四工大の他大学(東京都市大学、東京電機大学)が挙げられます。SITは、MARCH理工系と併願する受験生が非常に多いのが特徴です。
共通テスト利用入試では、ボーダーラインは75%〜85%程度と、こちらも高水準な争いになります。
SITの一般選抜は多様な方式がありますが、主に以下の3つが中心です。
英語・数学・理科(物理・化学から1)の3科目入試。SITの入試で最も募集人数が多いスタンダードな方式です。数学は数IIIまでが必須です。
前期日程と同じ3科目ですが、全国の試験会場で受験可能です。地方の受験生にとっては大きなメリットとなります。
共通テストの得点のみで合否を判定します。大学独自の試験はありません。高い得点率が求められます。
【科目別傾向】
【塾講師からのコメント】
SIT合格の鍵は、ズバリ「数学III」と「理科の基礎徹底」です。MARCH理工と比べ、奇問・難問は少ない傾向にありますが、その分、全範囲から抜け漏れなく標準問題を解ききる力が求められます。外部英語試験のスコアを持っている受験生は、それを活用できる入試方式を選ぶことで有利に戦える可能性があります。
SITの最大の強みは、その圧倒的な就職実績にあります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 実就職率 | 約99% (大学院進学者などを除く) |
| 大学院進学率 | 約30〜40%(学科により変動) |
| 主な就職先(業界) | 製造業、情報通信業、建設業、サービス業(コンサル含む) |
| 主な就職先(企業例) | 日立製作所、キヤノン、ソニーグループ、トヨタ自動車、本田技研工業、NTTデータ、大林組、清水建設、鹿島建設、ヤフー、楽天グループなど多数 |
【塾講師からのコメント】
SITの就職の強さは本物です。これは単に学生が優秀だからというだけでなく、大学が「学校推薦」の枠を非常に多く確保していることが大きいです。大手メーカーやゼネコン、IT企業への推薦枠は、学生にとって非常に強力な武器となります。また、より高度な専門職を目指し、大学院に進学する学生が3〜4割いる点も、研究レベルの高さを示しています。
理工系私立大学として、学費は標準的か、やや高めの水準です。
初年度納入金(入学金含む)は、学部によりますが概ね約170万円〜180万円程度です。これは文系学部(約120〜130万)と比較すると高く感じられますが、実験・実習設備や最先端の研究環境を維持するためであり、私立理工系としては平均的な金額です。
SITは独自の奨学金制度も充実させています。特に成績優秀者向けの給付型奨学金や、経済的理由で修学が困難な学生向けの支援制度があるため、該当する方は大学の募集要項を必ずチェックしてください。
SITが他の理工系大学と一線を画す、学びの特色を3点ご紹介します。
SITは文科省の「スーパーグローバル大学(SGU)」に私立理工系で唯一採択されています。英語による専門科目の授業、海外の大学との連携プログラム、短期留学制度などが非常に充実しており、世界で通用するエンジニアの育成に本気で取り組んでいます。
SITの教育は「実学」を非常に重視します。座学だけでなく、学生がチームを組んで実際の課題(例えば、企業の製品開発や社会問題の解決)に取り組む「PBL (Project Based Learning)」が多くの学科で導入されています。これにより、実践的な問題解決能力が養われます。
特に豊洲キャンパスの研究棟は、最新鋭の設備が整っています。学生が自由に使える「ものづくり」のためのワークショップ(SIT R&D Center)なども完備されており、自分のアイデアをすぐに形にできる環境は、理工系の学生にとって大きな魅力です。
大学の「生の声」として、ポジティブな評判と、注意すべきネガティブな評判(ミスマッチ防止)の両方を見ていきましょう。
“就職活動は本当に楽だった。学校推薦が強く、大手の説明会も学内で頻繁に開催される。教授のサポートも手厚い。”
“豊洲キャンパスは本当に綺麗で、近未来的な感じがする。立地も良く、勉強のモチベーションが上がる。”
“真面目な学生が多い。周りも勉強する雰囲気なので、自分も頑張れる。実験や研究に打ち込みたい人には最高の環境。”
“とにかく忙しい。実験とレポートの量が尋常ではなく、バイトやサークルとの両立が大変。楽して卒業したい人には絶対に向かない。”
“1、2年次の大宮キャンパスが遠い。東大宮駅からのバスも混雑する。豊洲とのギャップが大きい。”
“女子学生が学科によっては1割未満。良くも悪くも男子校のノリが残っていると感じることがある。”
MARCHの理工学部と芝浦工業大学、どちらを選ぶべきですか?
非常に悩ましい選択です。一般的な知名度や文系も含めた総合大学としての魅力はMARCHに軍配が上がります。一方、SITは理工系の専門性、研究設備、そして特にメーカーや建設業への「就職の強さ(推薦枠)」においてMARCHの理工系を凌駕する部分があります。「専門性を高めて優良企業に就職したい」という目的が明確なら、SITは非常に有力な選択肢です。
留年しやすいというのは本当ですか?
「留年しやすい」というより「楽に卒業はできない」というのが正確です。理工系大学の宿命ですが、必修の実験、実習、演習、そして専門科目の単位取得は厳格です。特に1年次・2年次の基礎科目(数学・物理など)でつまずくと、後の専門科目に響き、留年に繋がるケースがあります。裏を返せば、それだけみっちりと実力がつくということです。
芝浦工業大学の分析結果を総括します。
「四工大」のトップであり、MARCH理工系に匹敵する、国内トップクラスの私立理工系大学。「就職実績」と「実践的な教育」を求める学生にとって、最強の選択肢の一つ。
圧倒的な就職実績(特に学校推薦)。SGU採択によるグローバル教育環境。豊洲キャンパスの最新鋭の研究設備。実学重視のPBL。
学業が非常に忙しく、課題やレポートが多い。キャンパスが学年・学部で分かれている(特に大宮キャンパスへの通学負担)。理工系単科大学特有の雰囲気(男子学生が多い)。
【塾講師からのコメント】
芝浦工業大学は、「大学でしっかり専門知識と技術を学び、それを活かして優良企業で活躍したい」という明確な目的を持つ学生に、最高の環境を提供してくれます。しかし、そのリターン(就職)を得るためには、4年間(あるいは大学院含め6年間)の相応の努力が求められます。「大学生活は遊びたい」という気持ちが強い学生にはミスマッチが起こる可能性があります。
ご自身の「大学で何を成し遂げたいか」を明確にし、SITの「実学主義」がそれに合致するかどうか、じっくり検討してみてください。応援しています。