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『よくわかる高校数学』シリーズ(KADOKAWA)は、その名の通り「わかりやすさ」を徹底的に追求した講義形式の参考書です。教科書レベルの基礎の基礎から、入試の基礎レベルまでを非常に丁寧に解説しており、「数学が苦手な人」「学校の授業においていかれた人」の最後の砦として、長年多くの受験生に支持されています。
まるで学校の先生が隣で丁寧に補習授業をしてくれているような、圧倒的な詳しさが最大の特徴です。本冊の「講義」でじっくり理解し、別冊の「問題集」で定着を図るという、自学自習に最適化された構成になっています。
| 書名 | 『よくわかる高校数学』シリーズ(I・A、II・B、III) |
| 著者 | 藤原 進(ほか) |
| 対象レベル | 教科書レベル(偏差値40程度)〜共通テスト・日東駒専レベル |
| 値段 | 各巻 2,090円〜2,497円(税込) ※巻により異なる |
| 公式リンク | KADOKAWA公式サイト(https://www.kadokawa.co.jp/) |
最大の強みは、その「詳しさ」です。教科書では省略されがちな「なぜそうなるのか?」という根本原理や、公式の導出過程を、一切妥協せずに解説しています。他の講義本が「わかりやすさ」のために多少の簡略化を選ぶことがあるのに対し、本書は「詳しさこそが、本当のわかりやすさに繋がる」という著者ならではの哲学を感じさせます。
2色刷りで、図やグラフ、ポイントが非常に見やすく整理されています。重要な箇所は赤字で強調されており、付属の赤シートで隠して暗記チェックにも使えます。ゴチャゴチャしておらず、数学が苦手な人でもアレルギー反応が出にくいデザインです。
前提知識をほとんど要求しません。中学レベルの数学に不安がある人でも、この本から始めればスムーズに高校数学に入っていけます。講義、例題、練習問題という流れが確立しており、授業を受けなくても自力で進められるよう設計されています。
最大の強みである「詳しさ」は、そのまま「分厚さ」と「学習時間の長さ」という弱点につながります。I・A、II・B、IIIのすべてをゼロから終わらせようとすると、膨大な時間が必要です。難関大志望の受験生、特に高3から始める場合、このペースでは入試本番までに演習時間が確保できない危険性があります。
あくまで「講義本」であるため、理解を深めるための例題や練習問題はありますが、入試レベルの多様なパターンを網羅するほどの演習量は含まれていません。この本だけで問題が「解ける」ようにはならず、必ず後続の問題集(『基礎問題精講』など)が必要になります。
すでに学校の授業で一度習っている人や、ある程度数学が得意な人にとっては、解説が冗長すぎると感じるでしょう。「そんなことは知っている」という部分を読むのは時間の無駄であり、効率的な復習には向きません。
この分厚さ、一人でやりきれるか不安な方へ
『よくわかる高校数学』は素晴らしい本ですが、挫折率が非常に高い本でもあります。
「自分だけで最後までやりきれるだろうか…」「本当にMARCHのレベルまで間に合うの?」
そんな不安があるなら、まずはプロのコーチに相談してください。
本書は「本冊(講義)」と「別冊(問題集)」の2分冊構成が基本です。
問題数は、講義本としては標準的ですが、あくまで「理解の確認」レベルです。MARCH以上の入試で戦うための「網羅性」や「応用力」は、この本だけでは身につきません。
スタートレベル: 偏差値40〜(中学数学の基礎があればOK)
到達レベル: 共通テスト6〜7割、日東駒専レベルの基礎固め
MARCH以上を目指す受験生にとっては、この本は「スタートラインに立つための準備」と位置づけるべきです。この本を終えた時点での偏差値は50〜55程度であり、ここからが本当の受験勉強の始まりとなります。
数学の「なぜそうなるのか」という根本的な理解と、教科書レベルの知識の完全な網羅です。この本をやり込めば、学校の定期テストでは高得点が狙え、共通テストレベルの問題にも対応できる「揺るがない土台」が完成します。
難関大(MARCH・早慶)志望の場合、この本に時間をかけすぎるのは致命的です。
高3の夏休み以降は、MARCHレベルの標準的な問題演習(『基礎問題精講』や『標準問題精講』、過去問など)に時間を使わなければなりません。この本は、あくまでそれらの演習書に入るための「準備」であると強く認識してください。
特にありません。中学数学の基礎(計算力など)があれば、誰でも始められます。
『よくわかる』の次、MARCH合格までの最適ルートは?
この本を完璧にしても、まだMARCH合格には演習が足りません。
「次にやるべき問題集は?」「いつまでに何を終わらせる?」
私たち受験のプロが、あなた専用の学習計画(ルート)を一緒に作成します。
『よくわかる高校数学』の独自の強みは、「教科書レベルの網羅性」と「講義本のわかりやすさ」を最高レベルで両立させている点です。
『初めから始める数学』などは、わかりやすさの反面、一部の教科書レベルのトピックを省略している場合があります。一方で『チャート』などの網羅系は、辞書的すぎて初学者には読解が難しいです。
本書は、教科書に載っている内容を「すべて」、かつ「誰にでもわかるように」解説するという、非常に誠実な作りになっています。この「基礎の穴を絶対に作らない」という安心感が、最大の強みと言えるでしょう。
同じ「講義本」としてよく比較される2冊と比べてみましょう。
| 比較項目 | 本書:よくわかる高校数学 | 初めから始める数学 | やさしい高校数学 |
|---|---|---|---|
| コンセプト(どんな人向けか) | 詳しさNo.1の「教科書的」講義本。真面目にコツコツやりたい人向け。 | 超入門・語り口調。とにかく数学アレルギーを克服したい人向け。 | 図解・ビジュアル重視。会話形式で優しく教えてほしい人向け。 |
| 到達レベル(目標偏差値/大学) | 共通テスト6〜7割、日東駒専 | 共通テスト5〜6割 | 共通テスト5〜6割 |
| 解説の詳しさ(自学自習向きか) | ★★★★★ (詳しすぎて冗長) | ★★★★★ (易しさに特化) | ★★★★★ (図解に特化) |
| 問題数と網羅性 | 多め (講義本として) | 少なめ (理解優先) | 少なめ (理解優先) |
| 前提レベル(いつから使えるか) | 不要 (偏差値40〜) | 不要 (偏差値35〜) | 不要 (偏差値35〜) |
| 【ペルソナ視点】おすすめ度 | ★★☆☆☆ (2/5) | ★☆☆☆☆ (1/5) | ★☆☆☆☆ (1/5) |
MARCH以上の難関大学を志望する受験生の視点で見ると、正直、これら3冊の講義本は「おすすめ度」が低くなります。(表のおすすめ度が低いのはそのためです)
理由は単純で、「時間がかかりすぎる」からです。MARCHレベルの入試は、基礎を終えた後の「標準レベルの問題演習」の量が勝負を分けます。これらの本は、その「基礎」を固めるためだけに使うには、あまりにも重いのです。
では、どうすべきか?
もしあなたが高1・高2生で時間があるなら、基礎に穴を作らないために『よくわかる高校数学』をじっくりやるのは「アリ」です。網羅性は3冊の中で一番高いので、その後の接続がスムーズです。
もしあなたが高3生で、数学が壊滅的に苦手(偏差値40台)なら、『初めから始める数学』を1ヶ月で高速で終わらせ、すぐに『基礎問題精講』に進んでください。
もしあなたが高3生で、ある程度基礎ができている(偏差値50以上)なら、これらの講義本は使わず、『基礎問題精講』を講義本と問題集を兼ねて使い、わからないところだけ教科書や『よくわかる』を辞書的に参照するのが最も効率的です。
P.S. どの参考書を選ぶべきか、または具体的な進め方で迷っている場合は、私たち東大・早慶コーチが個別の学習計画を一緒に作成します。
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“本当にわかりやすい。学校でわからなかったところが全部書いてあった。これを読んでから学校の教科書を読むと、逆に教科書がわかりやすく感じるようになった。”
“高1の時に数学でつまづいて、これを買いました。めちゃくちゃ分厚いけど、毎日コツコツやったら定期テストで90点取れました。”
“分厚すぎてやる気が起きない。1冊終わらせるのに3ヶ月かかった。受験生、特に時間がない人には向かないかも。”
“わかりやすいけど、問題が簡単すぎる。これだけやっても模試の点数は上がらなかった。結局、基礎問や青チャートを追加でやった。”
『チャート式』や『Focus Gold』とはどう違いますか?
役割が全く違います。『よくわかる』は、ゼロから理解するための「講義本」です。一方、『チャート』などは、解法パターンを網羅的に演習するための「網羅系問題集(辞書)」です。多くの受験生は、まず『よくわかる』のような講義本で「理解」し、次に『チャート』などで「演習」を積むという順序で進めます。
これだけでMARCHに合格できますか?
無理です。断言できますが、この本はMARCH合格のための「スタートラインに立つ」ための本です。この本で得られるのは「教科書の完全な理解」であり、入試レベルの「問題解決能力」ではありません。この本を終えた後、『基礎問題精講』『標準問題精講』などの演習書、そして志望校の過去問演習が必須です。
『よくわかる高校数学』シリーズは、「数学の基礎を、一切の妥協なく、完璧に理解する」ための最強の講義本です。その詳しさと網羅性は、他の講義本の追随を許しません。
しかし、MARCH以上を志望する受験生にとっては、その「詳しさ」が「遅さ」につながる諸刃の剣でもあります。
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