目次
日本の最難関私立大学である早稲田大学および慶應義塾大学の理工系学部(通称:早慶理工)への進学を検討している理系の高校生を対象としています。偏差値や倍率といった表面的な数値の比較に留まらず、入試問題の質的な違い、入学後の学びの環境、そして将来のキャリアパスに至るまで、多角的な視点から両大学の「難易度」と「価値」を解き明かし、あなたの志望校決定における客観的な判断材料を提供することを目的とします。

慶應義塾大学経済学部経済学科3年生。
スタディコーチで勤務をしており、それ以前も小学生~大学受験生まで幅広い指導経験あり。
受験生の皆さんが損しないよう、お役立ち情報を日々発信していきたいと思っています!
まず、調査対象となる両大学の理工系学部の基本情報を整理します。早稲田大学は3つの理工系学部(基幹理工・創造理工・先進理工)から構成される「理工学術院」という体制を、慶應義塾大学は1つの理工学部の中に5つの「学門」を設置する体制を採っています。この構造の違いが、学びの専門性やキャリアにも影響を与えます。
| 項目 | 早稲田大学 理工学術院 | 慶應義塾大学 理工学部 |
|---|---|---|
| 構成 | 基幹理工学部、創造理工学部、先進理工学部の3学部体制。 | 1つの理工学部内に、学門A〜Eの5つの学門を設置。 |
| キャンパス | 西早稲田キャンパス(東京都新宿区) | 矢上キャンパス(神奈川県横浜市) |
| 学科決定時期 | 【基幹理工】2年進級時 【創造・先進】出願時に学科を選択(一部例外あり) |
2年進級時(1年次の成績に基づき、所属学門内の学科に配属) |
| 入試方式(一般) | 学部ごとに実施。英語・数学・理科(物・化)の3教科型が基本。 | 学部一括で実施。英語・数学・理科(物・化)の3教科型。 |
両大学の最大の違いは「専門分野へのアプローチ方法」にあると言えます。早稲田大学は、特に出願時に学科を決める創造理工・先進理工において、高校生の段階で学びたい分野が明確な学生に適しています。一方、慶應義塾大学の学門制は、大学1年間で幅広い学問に触れてから専門を決めたい学生にとって、ミスマッチの少ない合理的なシステムと考えられます。この「入学前の専門性明確化の要否」は、大学選択における最初の重要な分岐点となります。
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単に偏差値だけで「どちらが難しい」と結論付けることはできません。ここでは、客観的指標と入試問題の質的側面の双方から、その難易度を深掘りします。
大手予備校が公表している偏差値や各種データは、学力的な難易度を測る上での基本的な指標となります。
| 指標 | 早稲田大学 (基幹/創造/先進) | 慶應義塾大学 (理工) |
|---|---|---|
| 偏差値 (河合塾2025年度予想) |
65.0 〜 67.5 (学部・学科により異なる。先進理工の生命医科学科などが高い傾向) |
65.0 (学部一括募集のため偏差値は一つ) |
| 一般選抜 実質倍率 (2024年度実績参考) |
約3.0 〜 4.5倍 (学部・学科により変動。情報系学科が高い傾向) |
約2.5 〜 3.0倍 |
| 合格最低点 (2024年度実績参考) |
得点率 約55% 〜 65% (素点ベース。得点調整後のため一概に比較は困難) |
得点率 約58% 〜 63% (素点ベース。年度により変動) |
※偏差値・倍率は複数の情報源を基にした参考値です。必ず最新の大学公表情報をご確認ください。
合格を勝ち取るためには、偏差値以上に「入試問題との相性」が重要です。両大学の入試問題には明確な思想の違いが見られます。
| 科目 | 早稲田大学 理工 | 慶應義塾大学 理工 |
|---|---|---|
| 英語 (120点 / 90分) |
【特徴】長文読解中心。理系専門用語を含む学術的な文章が多く、内容の深い理解と論理的思考力が問われる。和訳・英訳問題も特徴的。 単語力・文法力に加え、文脈を正確に捉え、日本語で論理的に再構成する国語力に近い能力が求められる。時間的制約は慶應より緩やか。 |
【特徴】長文、文法、単語など多岐にわたる問題構成。特に、高いレベルの語彙力が要求される。処理速度が重要。 高度な語彙知識を前提とした上で、大量の問題を迅速に処理するスピードと正確性が合否を分ける。典型的な大学受験英語の総合力を高いレベルで試す問題と言える。 |
| 数学 (120点 / 120分) |
【特徴】全問記述式。証明問題が多く、解法のプロセスを重視。発想力や思考の深さを問う問題が散見される。 単に答えを出すだけでなく、「なぜその解法に至ったか」を論理的に示す記述力が不可欠。一つの問題にじっくり取り組む思考力のある受験生に向く。部分点を狙う戦略も重要。 |
【特徴】全問が空所補充形式だが、計算量は非常に多い。高い計算能力と、複雑な問題を素早く正確に処理する能力が求められる。 思考力よりも、標準的な解法をいかに素早く正確に適用できるかという「数学的体力」が問われる。計算ミスが致命傷になりやすく、日頃からの丁寧な演習が必須。 |
| 理科 (2科目) (120点 / 120分) |
【特徴】物理・化学ともに標準的な問題が多いが、思考力を要する設定や、やや見慣れないテーマからの出題もある。 教科書レベルの知識を深く理解し、それを応用する力が試される。一部の学科では特定科目の配点を重視するため(例:先進理工・応用化学科は化学重視)、志望学科に合わせた対策が必要。 |
【特徴】物理・化学ともに1冊の問題冊子で配布され、120分で2科目を解く。時間配分が極めて重要。問題の難易度自体は標準的だが、分量が多い。 知識の網羅性に加え、時間内に解き切るための戦略(解く問題の取捨選択)が合否を直結する。物理・化学ともに高いレベルでバランスの取れた学力が求められる。 |
入試問題の質から見ると、早稲田は「思考力・記述力重視型」、慶應は「処理能力・正確性重視型」と明確に色分けできます。これは、入学後に求められる学生像を反映していると考えられます。自分の得意な能力がどちらの大学のスタイルに合致しているかを冷静に分析することが、合格可能性を高める上で極めて重要です。
最難関大学であるが故の注意点も存在します。これらを事前に認識しておくことで、入学後のミスマッチを防ぐことができます。
両大学ともに、特に理工系学部は課題(レポート)の量が多く、実験・演習も頻繁に行われます。一般的に、他学部に比べて進級や卒業の要件が厳しいと評価されており、一定数の留年者が出ていることは事実です。自由な大学生活をイメージしていると、その多忙さに圧倒される可能性があります。
国公立大学と比較して、学費が高額である点は避けられません。特に理工系学部は施設・設備費がかかるため、文系学部よりも高くなる傾向があります。詳細は次章で解説しますが、経済的な負担については保護者の方と十分に相談する必要があります。
特に早稲田の創造・先進理工や、慶應で2年次に学科配属が決まった後は、高度に専門化された学問領域に没頭することになります。「なんとなく理系」という意識のまま入学すると、興味の持てない分野に進んでしまった場合に学習意欲の維持が困難になるリスクがあります。
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進学を検討する上で、学費は重要な要素です。以下に初年度納付金の目安をまとめます。
| 大学・学部 | 初年度納付金(目安) | 4年間総額(目安) |
|---|---|---|
| 早稲田大学 理工学術院 (各学部) | 約1,750,000円 ~ 1,800,000円 | 約6,800,000円 ~ 7,000,000円 |
| 慶應義塾大学 理工学部 | 約1,900,000円 | 約7,400,000円 |
※上記は2024年度入学者向けの情報を基にした概算です。正確な金額は必ず大学公式サイトの最新情報でご確認ください。
学費は両大学とも高水準ですが、それを補うための奨学金制度も充実しています。返済不要の「給付型奨学金」や、無利子または低利子の「貸与型奨学金」が、大学独自のもの、日本学生支援機構のもの、民間団体のものなど数多く用意されています。経済的な理由で進学を諦める前に、まずは両大学の奨学金担当部署のウェブサイトを熟読し、利用可能な制度がないか徹底的に調査することを強く推奨します。
ここでは、在学生や卒業生から聞かれる代表的な評判を、ポジティブな側面とネガティブな側面に分けて整理します。これらは個人の感想ですが、大学の雰囲気を知る上での参考情報となります。
「就職活動で大学名が不利になることはまずない。特に推薦応募の枠が豊富で、大手メーカーやIT企業への道が開かれている」「周りの学生のレベルが高く、常に刺激を受けられる環境。グループワークやディスカッションを通じて自分の視野が広がった」
「良くも悪くも学生数が多く、多様な価値観に触れられるのが魅力。サークル活動も活発で、他学部との交流も盛ん」「研究室の選択肢が非常に多い。自分の興味に完全に合致する研究テーマを見つけやすい」
「『半学半教』の精神が根付いており、学生と教員の距離が近い。質問しやすい雰囲気がある」「卒業生のネットワーク(三田会)が非常に強力で、社会に出てからも様々な場面で助けられると聞く」
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「課題が本当に多く、毎週何かしらのレポートに追われている感覚。アルバイトやサークルとの両立は計画性がないと難しい」「1、2年の基礎科目が面白く感じられず、モチベーションを維持するのが大変だった」
「西早稲田キャンパスは、いわゆる本キャン(早稲田キャンパス)のような華やかさはない。良く言えば研究に集中できる環境、悪く言えば少し地味」「学生数が多いため、良くも悪くも大学からのサポートは手厚いとは言えない。自主性が求められる」
「矢上キャンパスは最寄り駅(日吉駅)から坂を上る必要があり、地味に体力を消耗する」「内部進学生との間に学力や雰囲気の差を感じることがある。良くも悪くも独特のカルチャーがある」
受験生から多く寄せられる質問について答えていきます!
結局のところ、早稲田と慶應、どちらが「難しい」のですか?
一概には言えません。難易度の「質」が異なるため、受験生自身の能力や特性との「相性」によって、体感的な難易度は大きく変わります。
深い思考力や論理的な記述力に自信がある受験生にとっては慶應の方が難しく感じられ、逆に、高い処理能力や計算力、網羅的な知識量に自信がある受験生にとっては早稲田の方が難しく感じられる傾向があります。偏差値という単一の指標で優劣を決めるのではなく、過去問題を実際に解いてみて、どちらが自分にとって得点しやすいかを判断することが最も重要です。
国公立大学(東大・東工大など)と併願する場合、どちらが対策しやすいですか?
一般的には、早稲田大学の方が国公立大学との併願対策をしやすいと評価されています。
その理由は、早稲田の数学が記述式であり、東京大学や東京工業大学などの国公立大学の入試で求められる「論理的な答案作成能力」と親和性が高いためです。慶應の数学は空所補充形式で、処理能力に特化した対策が求められるため、国公立型の学習とは少し方向性が異なります。ただし、これはあくまで一般論です。英語や理科の相性もあるため、最終的にはご自身の志望する国公立大学の入試問題と早慶両方の問題を比較検討することが不可欠です。
入学後の学科選択で、希望の学科に行けないリスクはありますか?
はい、そのリスクは両大学に存在します。特に、1年次の成績によって2年次以降の専門学科が決まる慶應義塾大学(学門制)と早稲田大学基幹理工学部では、その傾向が顕著です。
人気の学科(情報系、機械系など)には希望者が集中するため、配属されるには1年次に高い成績を収める必要があります。大学の公表によれば、慶應義塾大学では例年8〜9割の学生が第一志望の学科に進級できているとされていますが、裏を返せば1〜2割の学生は第二志望以下の学科に進むことになります。大学入学がゴールではなく、希望の専門分野を学ぶためには入学後も継続的な努力が求められることを認識しておく必要があります。
どのような学生に各大学が推奨されるか、最終的な見解を提示します。
物事の本質を深く考え、論理的に説明することに長けている。
国公立大学(特に東大・東工大)を第一志望とし、併願校を探している。
数学や物理において、複雑な問題設定を解き明かすことに喜びを感じる。
多様な価値観を持つ多くの学生と交流したいという意欲がある。
高い計算能力と情報処理能力に自信があり、スピード感のある学習が得意。
幅広い学問分野に触れてから、自分の専門を慎重に決定したい。
英語の語彙力に自信があり、理系科目とバランスよく得点できる。
伝統や卒業生との強固なネットワークに魅力を感じる。
最終的に、どちらの大学があなたにとって「良い大学」であるかは、あなた自身の学力特性、興味関心、そして将来のビジョンによって決まります。そのための客観的で冷静な判断の一助となれば幸いです。