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大学受験の数学において、「網羅系参考書」の代名詞として圧倒的な知名度と実績を誇るのが、数研出版の『チャート式基礎からの数学』シリーズ、通称「青チャート」です。
しかし、その分厚さと情報量の多さから「本当に自分に必要なのか?」「どう使えばいいのか?」と悩む受験生も少なくありません。
この記事では、青チャートがどんな人におすすめできるか、他の参考書とも比較しながら徹底的に分析します。
まずは、シリーズ3冊の基本的な情報を確認します。
| 書名 | 新課程 チャート式基礎からの数学I+A 新課程 チャート式基礎からの数学II+B 新課程 チャート式基礎からの数学III+C |
| 著者 | チャート研究所 編著 |
| 対象レベル | 教科書レベル ~ 入試標準レベル |
| 値段 | I+A: 2,145円 (税込) II+B: 2,288円 (税込) III+C: 2,453円 (税込) (※2025年11月時点) |
| 公式リンク | 数研出版 公式サイト |
この記事を監修した人
慶應義塾大学経済学部経済学科3年生。
スタディコーチで勤務をしており、それ以前も小学生~大学受験生まで幅広い指導経験あり。
受験生の皆さんが損しないよう、お役立ち情報を日々発信していきたいと思っています!
青チャートの最大の特徴は、その圧倒的な「網羅性」です。入試で問われるほぼ全ての解法パターンが掲載されています。
主な構成は以下の通りです。
1. 基本例題・重要例題:
本書の核となる部分。典型的な問題とその解法(指針・チャート)が示されます。
2. 練習:
各例題に対応した類題です。例題の解法を自力で再現できるかを確認します。
3. EXERCISE (エクササイズ):
章末問題。A問題(標準)とB問題(応用)に分かれています。
4. 総合演習:
巻末に収録された、より実戦的な演習問題です。
シリーズ3冊の例題と練習問題の総数は以下の通りです。(※新課程版のおよその数)
・数学I+A: 約500題 (例題 約270 + 練習 約230)
・数学II+B: 約630題 (例題 約340 + 練習 約290)
・数学III+C: 約450題 (例題 約240 + 練習 約210)
これにEXERCISEや総合演習が加わるため、そのボリュームは膨大です。
この問題数こそが、青チャートの「強み」であり「弱み」でもあります。すべてを完璧にこなそうとすると、間違いなく挫折します。GMARCHレベルを目標とする場合、まずは「基本例題」「重要例題」の解法を完璧に理解し、自力で再現できるようにすること。これが最優先課題です。
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青チャートがカバーするレベルは非常に広いです。
下限: 教科書の章末問題レベル
上限: GMARCH・中堅国公立の合格ライン ~ 難関国公立(旧帝大除く)の標準問題レベル
例題についている「コンパス(COMPASS)マーク」がレベルの目安になります。
・コンパス1~2: 教科書レベル(定期テスト対策)
・コンパス3: 入試基本レベル
・コンパス4: 入試標準レベル
・コンパス5: 入試応用レベル
GMARCH・中堅国公立志望であれば、まずはコンパス3~4の例題を完璧にすることが目標となります。
青チャートをマスターすることで得られるのは、「入試標準レベルまでの盤石な解法ストック(辞書)」です。
「この問題、見たことがある(青チャートのあの例題だ)」という状態を作り出すことができます。
▼ おすすめな人
・GMARCH、中堅国公立以上を目指す受験生
・数学の基礎(教科書レベル)は一通り理解している人
・典型問題の解法を網羅的に習得したい人
・勉強時間を十分に確保でき、継続力がある人
GMARCH・中堅国公立志望(高3・目安偏差値55)の場合
目標は、「高校3年生の夏休み明け(9月1日)までに、数学I+A・II+Bの基本・重要例題を一通り終え、コンパス3~4レベルは自力で解ける状態にする」ことです。
・~高3・夏休み前: 数学II+Bの例題を中心に、学校の進度に合わせて進める。
・高3・夏休み: 数学I+Aの復習と、数学II+B(特に微分・積分・ベクトル・数列)の例題を徹底的に反復する。
・高3・9月~: 例題の2周目・3周目を行いつつ、共通テスト対策や志望校の過去問演習に入ります。過去問で解けなかった問題は、青チャートに戻って該当する例題を探す「辞書引き」を行います。
※理系で数学III+Cが必要な場合は、数学III+Cの例題を9月末までに終えるのが理想です。
1. 挫折率の高さ(分厚さ)
最大の注意点です。完璧主義の人はEXERCISEや総合演習まで手を出そうとしがちですが、まずは例題と練習に絞ってください。
2. 前提知識の必要性
青チャートは「基礎からの」とありますが、教科書レベルの定義や公式が全く入っていない状態(偏差値40台前半程度)で始めると、解説を理解するのに時間がかかり非効率です。
3. 「作業」にならないこと
解答を写すだけ、読むだけでは力になりません。必ず「なぜその解法(指針)に至ったのか」を理解し、自力で解答を再現する練習が必要です。
GMARCH志望(目安偏差値55)の受験生に向けた、最もおすすめの効率的な使い方を提案します。
ステップ1: 例題の指針と解答を読み、理解する
まずは解法をインプットします。
ステップ2: すぐに下の「練習」問題を解く
自力で解けるか試します。解けなければ、すぐに例題に戻って解法を確認します。
ステップ3: 印(しるし)をつける
・〇: 自力で完璧に解けた
・△: 解けたが、自信がない・時間がかかった
・✕: 解けなかった
ステップ4: 2周目以降は△と✕のみを解く
2周目、3周目と反復し、すべての例題・練習が〇になるまで繰り返します。
EXERCISEや総合演習は、9月以降、例題が完璧になってから手をつけるかどうか判断しましょう。GMARCHレベルであれば、例題の解法が身についていれば、過去問演習に移った方が効率的な場合が多いです。青チャートを「解法の辞書」として使い、過去問演習で「実践力」を鍛えるイメージです。
青チャートの独自の強みは、圧倒的な実績と信頼感です。
数十年にわたり、無数の受験生と指導者に使われ、改訂を繰り返されてきた実績は、他の参考書を寄せ付けません。
この「定番書」を使っているという安心感が、受験勉強の精神的な支えになる側面もあります。また、解説動画などの関連コンテンツが豊富な点も強みです。
ここでは、受験の核となる『数学II+B』を対象に、同レベルの競合参考書と比較します。
・『Focus Gold(フォーカスゴールド) 数学II+B』(啓林館)
・『基礎問題精講 数学II・B』(旺文社)
| 比較項目 | 青チャート | Focus Gold | 基礎問題精講 |
|---|---|---|---|
| コンセプト | 網羅系。入試の標準的な解法を「辞書的」にストックする。 | 網羅系。青チャートよりやや難易度高め。解説が丁寧で「参考書」的。 | 厳選系。入試に必要な「核」となる解法を最短で習得する。 |
| 問題数 (例題) | 多い (II+Bで約340題) | 非常に多い (II+Bで約430題) | 少ない (II・Bで合計約170題) |
| 到達レベル | 入試標準 (GMARCH・中堅国公立) | 入試標準~応用 (GMARCH~難関国公立) | 入試基本~標準 (日東駒専~GMARCH) |
| 解説の詳しさ | 簡潔。「指針」が中心。 | 非常に丁寧。思考プロセスやコラムが充実。 | 丁寧。「精講」として解法のポイントがまとまっている。 |
| おすすめな人 (ペルソナ視点) | 網羅性とレベル感がGMARCHを志望する受験生にちょうど良い。 |
早慶も視野に入ってくるレベル。ただし時間がかかる点に注意。 |
偏差値55ほどならやや物足りない。偏差値40台から始めるなら最適。 |
『基礎問題精講』は、すでに偏差値55程ある生徒にはやや物足りず、演習量が不足する可能性があります。逆に『Focus Gold』は、Step Up問題などを含めるとGMARCHレベルにはオーバーワーク気味で、挫折のリスクが青チャート以上に高まります。青チャートの例題を完璧にするのが、最も王道かつ効率的なルートです。
“これ一冊やりこめば、大抵の大学の入試問題に対応できる安心感がすごい。解説も簡潔で分かりやすい。”
“例題の横にある練習問題ですぐにアウトプットできる構成が良い。コンパスマークでレベルが分かるのも便利。”
“分厚すぎて終わらない。1周するのに時間がかかりすぎて、結局他の薄い問題集に乗り換えてしまった。”
“解答がシンプルすぎて、なぜそうなるのか分からない時がある。教科書レベルが怪しい人は、もっと手前の参考書が必要。”
あなたの勉強計画、本当にそれで大丈夫?
スタディコーチでは、質×量を達成する学習計画を立て、それをやり切れるサポートをします。
次やるべき参考書はどれ?1日どのくらい進めればいいの?
公式LINEでは、無料で学習ルートをプレゼント中!
白チャートや黄チャートとの違いは何ですか?
主にレベルと網羅性が異なります。
・白: 教科書レベルの徹底(基礎固め)
・黄: 教科書レベル~入試基礎(日東駒専・共通テスト対策)
・青: 教科書レベル~入試標準(GMARCH・中堅国公立)
・赤: 入試標準~入試発展(難関・最難関国公立、早慶)
※あくまで目安となります。
例題と練習だけで、EXERCISEや総合演習はやらなくてもいいですか?
はい、GMARCHレベル志望であれば、まずは例題と練習を完璧にすることを最優先にしてください。それらが完璧(9割以上スラスラ解ける)になったら、志望校の過去問演習に進みましょう。EXERCISEは、過去問演習と並行して、苦手分野の補強として使うのが効率的です。すべてをやる必要はありません。
『新課程 チャート式基礎からの数学』(青チャート)は、その圧倒的な網羅性により、入試標準レベルの解法を辞書的にストックできる、非常に優れた参考書です。
特に、中堅国公立・GMARCHレベル志望、現在の模試偏差値55程度の受験生にとっては、レベル感、網羅性ともに最適の一冊と言えます。
ただし、その分厚さゆえに挫折しやすいのも事実です。
【結論】
・GMARCHレベルを目指す偏差値50台の受験生に最適!
・ただし、すべてを完璧にしようとしないこと。
・まずは「例題と練習」(特にコンパス3~4)を、「高3の夏休み明けまで」に完璧に仕上げることを目標に取り組んでください。