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MARCH以上の私立文系を目指すものの、「数学が全般的に苦手」という受験生にとって、数学を選択科目にすることは大きな賭けです。しかし、適切に学習すれば、数学は社会科よりも安定した得点源となり得ます。
今回は、そんな数学アレルギーを持つ受験生の「救世主」として名高い、マセマ出版社の『初めから始める数学』シリーズ(以下、「初はじ」)を徹底分析します。
この記事では、なぜこの参考書が支持されるのか、その真の実力と、難関大学合格のために「本当に必要な使い方」を、塾講師がデータを基に専門的かつ独自の視点も交えて解説します。
この記事を監修した人
慶應義塾大学経済学部経済学科3年生。
スタディコーチで勤務をしており、それ以前も小学生~大学受験生まで幅広い指導経験あり。
受験生の皆さんが損しないよう、お役立ち情報を日々発信していきたいと思っています!
「初はじ」は、大学受験参考書の中でも特に「講義形式」を徹底したシリーズです。まるで隣で先生が1対1で語りかけてくるような、非常に丁寧な口調で数学の概念をゼロから解説してくれます。教科書や他の参考書が「分かること」を前提に進めてしまうような行間の計算や思考プロセスを、一切省略せずに言語化しているのが最大の特徴です。
(※ここでは私立文系受験で主に使用する「数学I」を代表として記載します)
| 書名 | 初めから始める数学I |
| 著者 | 馬場 敬之・高杉豊 |
| 対象レベル | 高校入門・中学総復習 〜 共通テスト基礎(偏差値30〜50) |
| 値段 | 1,468円(税込)(2025年11月時点) |
| 公式リンク | マセマ出版社 公式サイト |
本書の構成は非常にシンプルです。
1. 講義(解説): 本書の核となる部分です。著者の馬場先生が、生徒に語りかける口調で「なぜそうなるのか」を徹底的に解説します。
2. 例題: 講義で学んだ内容を具体的に確認するための、最も基本的かつ重要な問題が選ばれています。
3. 練習問題: 各章の最後に、理解度を確認するための問題が数問配置されています。
特筆すべきは、圧倒的な解説のボリュームに対し、問題数が極端に少ないことです。「数学I」1冊を通しても、例題と練習問題を合わせて100問程度です。これは、本書が「問題演習」ではなく、あくまで「概念の完全理解」を目的としていることを示しています。
レベルは「教科書の導入・中学数学の復習」レベルです。
学校の授業についていけなくなった生徒や、中学レベルの数学(特に因数分解や二次関数)に不安がある生徒が、最初に手に取るべき一冊です。偏差値で言えば、30台や40台の生徒が50を目指すための土台作りに最適です。
この参考書をやり遂げることで得られるのは、「入試問題を解く力」ではありません。得られるのは、以下の2点です。
1. 数学アレルギーの克服: 「数学=分からないもの」という拒否反応がなくなり、「なぜそうなるのか」を考える姿勢が身につきます。
2. 次の参考書に進むための「土台」: この本で学んだ「考え方」は、次に接続する『基礎問題精講』などの網羅系参考書の解説を「理解できる」ようにするための前提知識となります。
「MARCH志望だが数学が全般的に苦手な文系受験生」には、おすすめです!!
特に、以下のような人には強くおすすめします!
・高校の数学の授業で、最初の定期テストからつまずいてしまった人
・教科書の日本語が難しく感じてしまう人
・中学の数学から復習が必要だと感じている人
逆に言えば、「数学は苦手だけど、学校の授業はギリギリついていけている」「定期テストで平均点くらいは取れる」という生徒には、この「初はじ」は丁寧すぎる(=くどい)可能性があります。その場合は、後述する『入門問題精講』などから始めても良いでしょう。自分の現在地を正しく見極めることが重要です。
MARCH以上の数学受験を考えると、「初はじ」に時間をかけすぎることはできません。これはあくまで「助走」です。
・MARCH志望(高3生)の場合: 遅くとも高3の5月末までには「I・A」「II・B」の範囲を終わらせたいところです。夏休みからは本格的な網羅系参考書(基礎問題精講など)に入る必要があります。
・MARCH志望(高2生)の場合: 高2の冬休み(1月)までに終わらせ、高2の3学期から次のステップに進むのが理想的なペースです。
最大の注意点は、「これ1冊で満足しないこと」です。
「初はじ」を終えた直後は、「数学が分かるようになった!」という万能感に包まれがちです。しかし、それはあくまで「解説が理解できた」だけであり、「入試問題が自力で解ける」状態とは天と地ほどの差があります。本書の演習量は絶対的に不足しています。
高校数学の知識は一切不要ですが、最低限の「中学レベルの計算力」(文字式の計算、一次・二次方程式)は必要です。もしそこにも不安がある場合は、急がば回れで中学のドリルから復習してください。
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1. とにかく「熟読」する: 問題を解くことよりも、解説の「講義」部分を読み込むことを最優先にします。なぜその公式が生まれたのか、なぜその解法を選ぶのか、著者の語りかけに「はい、はい」と相槌を打つように読み進めます。
2. 例題を「説明できる」ようにする: 例題を解いた後、解答・解説を読みます。その後、一度本を閉じて、「なぜその解答プロセスになるのか」を自分の言葉で(あるいは声に出して)説明できるようにします。これが「分かったつもり」を防ぐ最も効果的な方法です。
3. 練習問題は自力で解き、間違えたら講義に戻る: 練習問題で間違えた場合、すぐに答えを見るのではなく、該当する講義部分や例題を読み返し、考え方の根本を再確認してください。
「初はじ」の独自の強みは、「数学ができない生徒の『なぜ?』を絶対に放置しない」という徹底した編集方針にあります。
他の参考書が「このくらい分かるだろう」と省略するような、本当に初歩的なつまずきポイントを、これでもかというほど丁寧に解説します。この「過保護」とも言える丁寧さが、数学アレルギーの生徒にとっては何よりの「安心感」につながり、学習を継続させるモチベーションとなります。
「初はじ」と同じ「導入・講義系」の参考書として、よく比較される2冊と比べてみましょう。
| 比較項目 | 本書(初めから始める数学) | 競合書A(やさしい高校数学) | 競合書B(入門問題精講) |
|---|---|---|---|
| コンセプト | 徹底した語り口調の「講義」 | 会話形式で進む「講義」 | 「精講」シリーズの入門「問題集」 |
| 丁寧さ(語り口) | ◎(非常に丁寧・過保護) | ◎(丁寧・キャラクターの会話) | ○(解説は丁寧だが講義調ではない) |
| 問題量 | ×(非常に少ない) | △(やや少ない) | ○(必要最低限の網羅性あり) |
| レイアウト | シンプル・文字多め | 2色刷り・図解多め | 見開きで問題と解説(機能的) |
| 次の接続先 | 『元気が出る数学』『基礎問題精講』 | 『基礎問題精講』など | 『基礎問題精講』 |
どれを選ぶべきか?
・本当にゼロから、中学レベルも怪しい人 → 『初めから始める数学』
・カラフルなレイアウトや図解で楽しく学びたい人 → 『やさしい高校数学』
・講義はそこそこで、ある程度「問題演習」もしたい人 → 『入門問題精講』
数学が全般的に苦手、いわゆる「数学アレルギー」のような受験生には、やはり『初めから始める数学』が最もフィットする可能性が高いと考えられます!
“偏差値40なかったが、これを読んで初めて数学の解説が理解できた。数学が嫌いじゃなくなっただけでも価値がある。”
“学校の先生が省略するような計算の途中式も全部書いてあって、本当にかゆいところに手が届く。なぜこの式変形をするのかが初めて分かった。”
“問題数が少なすぎる。これを3周しても、模試の問題は全く解けなかった。あくまで導入書。”
“解説が丁寧すぎて、逆にくどく感じた。ある程度分かる人にはテンポが悪いかもしれない。”
本当にこれだけでMARCHに合格できますか?
絶対にできません。「初はじ」は、MARCH合格に必要なレベルを100とすると、最初の10〜20に到達するための参考書です。これは「スタートラインに立つ」ための本であり、ゴールテープを切るための本ではありません。この後に続く『基礎問題精講』や『文系の数学』シリーズなど、MARCHレベルの網羅系・演習系参考書が必須です。
マセマの「元気が出る数学」や「合格!数学」との違いは何ですか?
マセマのシリーズはレベル別に分かれています。
1. 『初めから始める数学』(本書): 導入・教科書レベル
2. 『元気が出る数学』: 共通テスト・日東駒専レベル
3. 『合格!数学』: MARCH・地方国公立レベル
4. 『頻出!レベル数学』: 早慶・難関国公立レベル
「初はじ」が終わったら、次は『元気が出る数学』に進むのがマセマの想定ルートです。ただし、演習量を補うために『基礎問題精講』を間に挟む受験生も多いです。
『初めから始める数学』は、「数学が根本的に分からず、MARCH受験を諦めかけている文系の生徒」にとって、最高の「最初の一冊」です。
その圧倒的な丁寧さは、数学への拒否感を和らげ、次のステップに進むための確実な土台を築いてくれます。
ただし、その優しさ(問題数の少なさ)に甘えてはいけません。MARCH合格という目標から逆算すると、これはあくまで通過点です。この本で数学の「考え方」を学んだら、すぐに次の「解き方(演習)」を学ぶ参考書へと進んでください。
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【この記事から皆様に伝えたいメッセージ】
・数学偏差値30〜40台のMARCH志望者には、「最初の一冊」として強くおすすめします!
・高3の夏休み前までに終わらせ、必ず『基礎問題精講』などの網羅系参考書に接続することが必須です!!