目次
「本当にMARCH以上を目指す受験生が使っていいのか?」「いつまでに終わらせればいいのか?」「『はじてい』シリーズや『新研究』とどう違うのか?」といった疑問に対し、客観的データと合格実績から深掘りします。
この記事を監修した人
慶應義塾大学経済学部経済学科3年生。
スタディコーチで勤務をしており、それ以前も小学生~大学受験生まで幅広い指導経験あり。
受験生の皆さんが損しないよう、お役立ち情報を日々発信していきたいと思っています!
『宇宙一わかりやすい高校化学』シリーズは、「理論化学」「無機化学」「有機化学」の3分冊(およびそれらをまとめた合冊版)で構成される講義系参考書です。
最大の特徴は、とっつきやすさを追求したフルカラーの紙面、豊富なイラスト、そしてキャラクターによる会話形式の解説です。左ページに解説、右ページに図解という一貫した構成で、化学現象を視覚的に理解させることに重点を置いています。
| 書名 | 宇宙一わかりやすい高校化学(理論化学 / 無機化学 / 有機化学) |
| 著者 | 船登 惟希 (著), 松浦 クミ (イラスト) |
| 対象レベル | 化学初学者(偏差値40〜) / 共通テスト基礎 / 日東駒専レベル |
| 値段 | 各巻 約1,628円(税込) ※分冊版の場合 |
| 公式リンク | 学研出版サイト |
1. 圧倒的な「とっつきやすさ」と視覚的な理解
最大の強みです。フルカラーのイラストや図解、キャラクターの会話形式は、化学が苦手な受験生や、活字ばかりの参考書に抵抗がある人にとって、学習のハードルを極限まで下げてくれます。「モル濃度」や「化学平衡」など、初学者がつまずきやすい抽象的な概念を、視覚的にイメージで捉えられるよう工夫されています。
2. 語り口調の丁寧すぎる解説
まるで隣で先生が1対1で説明してくれているような、非常に丁寧な語り口調で書かれています。学校の授業で置いていかれた部分を補ったり、独学でゼロからスタートしたりする際に最適です。
3. 「講義」と「問題演習」の分離
各単元は「講義(解説本)」と「別冊(問題集)」に分かれています。インプット(講義)で理解した直後に、アウトプット(別冊)で基本的な知識を確認できるため、学習リズムが作りやすい設計になっています。
1. 難関大(MARCH以上)には圧倒的に不足
本書のレベルは、あくまで「教科書レベルの完全理解」までです。MARCH以上の入試問題で合格点を取るためには、本書の後に『重要問題集』や『化学の新演習』などの標準〜応用レベルの問題集が必須です。本書だけで完結しないことは強く認識する必要があります。
2. 情報の網羅性とスピード感の欠如
「わかりやすさ」を最優先するあまり、解説が冗長になっている側面があります。また、難関大で問われるような細かい知識や、発展的な内容は意図的にカットされています。すでに化学の基礎がある程度わかっている人や、短期間で効率よく全範囲を終わらせたい人には、情報量不足やスピード感の遅さがネックになります。
3. 分冊によるボリュームとコスト
理論・無機・有機の3冊(または厚い合冊版)を揃える必要があり、すべてやり切るには相応の時間がかかります。また、コストも他の講義系参考書と比べて高くなりがちです。
「わかりやすいけど、本当に終わるか不安…」
『宇宙一』は丁寧な分、計画通りに進めないとMARCH以上のレベルに間に合いません。
「このペースで大丈夫?」と不安になったら、すぐにプロの計画を頼ってください。
前述の通り、本書は「左ページ:解説」「右ページ:図解・イラスト」という見開き完結のレイアウトが基本です。各セクションの最後には「まとめ」があり、重要なポイントが整理されています。
別冊問題集:
本体から取り外し可能な別冊問題集が付属しています。問題のレベルは、教科書の章末問題レベル〜簡単な入試基礎レベルです。知識の定着を確認するためのものであり、演習量は多くありません。
ボリューム(分冊版):
・理論化学:約320ページ
・無機化学:約250ページ
・有機化学:約300ページ
合計すると約870ページとなり、講義系参考書としてはかなりのボリュームです。
前提レベル:化学基礎が不安なレベル(偏差値40程度)からスタート可能です。中学理科レベルの知識があれば問題なく読み進められます。
到達レベル:教科書の内容の完全理解、共通テストで6〜7割、日東駒専レベルの入試問題に対応できる基礎力が身につきます。
難関大志望者にとっての立ち位置:
MARCHや早慶、国公立を目指す理系受験生にとっては、「本格的な受験勉強に入るための土台(0→1)を作る」ための参考書です。本書の到達レベルは、あくまでスタートラインです。
本書を完璧にすることで、「なぜそうなるのか?」という化学の根本的な原理・原則を、イメージを伴って理解することができます。丸暗記ではなく、現象を理解する力が身につくため、この後の問題演習の効率が格段に上がります。
<特におすすめする人>
・化学に対して「アレルギー」レベルの苦手意識を持っている人。
・学校の授業についていけず、ゼロから化学をやり直したい高2生、高3生。
・活字や数式が並ぶと頭に入ってこない、視覚的に理解したい人。
<おすすめしない人>
・すでに定期テストや模試で安定して6割以上取れている人。(冗長に感じます)
・受験まで時間がなく、効率(スピード)を最優先したい人。
ペルソナ(MARCH以上志望)の場合、基礎固めにかける時間は限られています。
・高校3年生(受験生)の場合:
遅くとも高3の夏休み前(7月中旬)までには3冊(理論・無機・有機)の通読と別冊問題集を終わらせ、夏からは『重要問題集』などの標準レベルの問題演習に移行必須です。「理論」は計算や概念の理解に時間がかかるため、最優先で高3の5月頃までに終わらせるのが理想です。
・高校2年生の場合:
学校の進度に合わせて、あるいは先取りとして使用し、高2の終わり(3月)までに全範囲を一周できると、高3からの演習が非常にスムーズになります。
注意点1:これだけで「勉強した気」にならない
「読んだ=わかった」「わかった=解ける」ではありません。本書は「わかった」状態にするのがゴールですが、入試は「解ける」状態にしなければなりません。必ず別冊問題集や、次のレベルの問題集でアウトプットを行ってください。
注意点2:時間をかけすぎない
非常に丁寧なため、じっくり読み込むとあっという間に時間が過ぎます。MARCH以上志望者は、本書は「土台」と割り切り、多少理解が甘くてもテンポよく進め、問題演習の中で知識を定着させる意識も重要です。
前提知識:
中学理科レベルで十分です。本当にゼロからでも始められます。
Step 1: 通読と理解(インプット)
まずは講義部分(左ページ・右ページ)を読み進めます。わからなくても立ち止まらず、まずは全範囲を高速で1周し、全体像を掴むことを推奨します。
Step 2: 別冊問題集の演習(アウトプット)
該当単元の講義を読んだら、すぐに別冊の問題を解きます。解けなかった問題は、講義部分に戻って「なぜ解けなかったのか」を徹底的に確認します。
Step 3: 2周目以降(知識の定着)
2周目は、別冊問題集で間違えた問題を中心に解き直します。講義部分は辞書的に使い、理解が曖昧な箇所を読み返します。
Step 4: 次の問題集への接続
本書の別冊問題集が8〜9割解けるようになったら、本書の役割は終了です。すぐに『[化学]重要問題集』(数研出版)や『[化学]基礎問題精講』(旺文社)など、MARCHレベルに対応できる標準的な網羅系問題集に進みましょう。
『宇宙一』の後は、どの問題集に進むべき?
MARCH以上志望なら、次の「問題集選び」と「接続」が合否を分けます。
あなたの現在の学力と志望校に合わせた「あなた専用の参考書ルート」を設計します。
『宇宙一わかりやすい高校化学』の独自の強みは、「化学現象の”翻訳”力」にあります。
他の講義書が「化学のルール」を論理的に説明しようとするのに対し、本書は「なぜそのルールが必要なのか」「その現象は日常の何に似ているか」というレベルまで噛み砕き、受験生が最も理解しやすい「言葉」と「ビジュアル」に翻訳して提供してくれます。この「アレルギー除去性能」は、他の参考書の追随を許しません。
今回は、ペルソナ(MARCH以上志望)が導入書として比較検討するであろう2冊を選定しました。講義系の王道『〇〇をはじめからていねいに』シリーズ(東進ブックス)と、理系難関大受験生のバイブル『化学の新研究』(三省堂)です。
| 比較項目 | 本書(宇宙一) | はじてい | 新研究 |
|---|---|---|---|
| コンセプト | 「なぜ?」をビジュアルで解説。化学アレルギーをゼロに。 | 予備校の分かりやすい授業を紙面で再現。受験に必要な要点を重視。 | 化学の全知識を網羅する「辞書」。大学レベルの背景も含む。 |
| 到達レベル | 共通テスト〜日東駒専基礎 | 共通テスト〜MARCH基礎 | 共通テスト〜東大・京大・医学部(※ただし演習は別途必要) |
| 解説の詳しさ(自学向き) | 非常に手厚い(イラスト・会話)。自学に最適。 | 詳しい(講義口調)。自学向きだが、ある程度の読解力は必要。 | 詳しすぎる(教科書的)。導入書としての自学には不向き。 |
| 問題数と網羅性 | 別冊問題集は基礎レベル。網羅性は低い。 | 例題・問題は基礎〜標準。網羅性は『宇宙一』より高い。 | 網羅性は最強(辞書)。ただし問題演習用ではない。 |
| 前提レベル(いつから) | 偏差値40〜(ゼロからOK) | 偏差値45〜(教科書レベルは必要) | 偏差値55〜(講義書を終えた後) |
| 【ペルソナ視点】おすすめ度 | 4.0 / 5.0 (※化学が苦手な場合) | 4.5 / 5.0 (※効率重視の場合) | 2.0 / 5.0 (※導入書としては) |
今回のペルソナは「MARCH以上志望の理系受験生」です。このペルソナにとって、この3冊の使い分けは非常に重要です。
結論:化学への苦手意識の「有無」で使い分けてください。
1. 化学が本当に苦手・ゼロから(偏差値50未満):『宇宙一』
MARCH以上志望であっても、化学の基礎(モルや酸化還元)でつまずいているなら、迷わず『宇宙一』から始めてください。ここで「わかる」体験を積むことが、後々の応用問題へのエネルギーになります。ただし、夏前には必ず終え、すぐに標準問題集に接続する覚悟が必要です。
2. 学校の授業はわかる・効率重視(偏差値50以上):『はじてい』シリーズ
活字を読むことに抵抗がなく、受験に必要な知識を最短距離でインプットしたいなら『はじてい』シリーズが優れています。『宇宙一』より解説がシャープで、到達レベルもやや高いため、MARCH志望の受験生の「1冊目」として非常にバランスが良いです。
3. 2冊目以降の辞書として:『化学の新研究』
『新研究』を「1冊目」の講義書として使うのは無謀です。情報量が膨大すぎて挫折します。これは『宇宙一』や『はじてい』を終え、標準問題集を解き始めた段階で、「より深い理解」や「載っていない知識」を調べるための「辞書」として使う本です。MARCH以上志望なら、最終的に必ず手元に置くべき本ですが、スタートで使う本ではありません。
P.S. どの参考書を選ぶべきか、または具体的な進め方で迷っている場合は、私たち東大・早慶コーチが個別の学習計画を一緒に作成します。
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“本当に化学が何もわからなかったけど、これのおかげで初めて「わかる」と思えた。イラストが神。化学アレルギーだった自分でも読み進められた。”
“左に解説、右に図解のレイアウトが秀逸。特に理論化学の難しい概念が、視覚的にすっと入ってくる。別冊の問題集も使いやすい。”
“わかりやすいのは間違いないが、とにかく進まない。解説が丁寧すぎて、全部読むのに時間がかかりすぎる。受験まで時間がない人には向かないかも。”
“これを完璧にしても、模試の偏差値は55くらいで頭打ちになった。MARCH以上を目指すなら、当たり前だけどこれだけじゃ絶対に足りない。あくまで土台。”
理論・無機・有機、どの順番でやるべきですか?
必ず「理論化学」から始めてください。理論は化学全体の計算やルールの土台となる最重要分野です。理論がわからないと、無機も有機も暗記に頼るしかなくなります。
理想の順番は「理論 → 無機 → 有機」ですが、「理論」と並行して、暗記が中心の「無機(の前半)」を進めるのも効率的です。
別冊の問題集だけで、問題演習は足りますか?
いいえ、まったく足りません。特にMARCH以上志望の理系受験生にとっては、演習量が圧倒的に不足しています。
別冊問題集は、あくまで「講義で読んだ内容を理解できているか確認する」ためのものです。本書を終えたら、必ず『重要問題集』や『基礎問題精講』などの網羅系問題集に進んでください。
学校で配られた『リードα』や『セミナー化学』とどう使い分ければいいですか?
『リードα』や『セミナー化学』は「網羅系問題集」であり、『宇宙一』は「講義系参考書」です。役割が全く異なります。
学校の授業や教科書を読んでも『セミナー化学』の問題が解けない場合、その「わからない」を埋めるために『宇宙一』を使います。『宇宙一』で単元を理解し、『セミナー化学』で演習する、という使い分けが最強の組み合わせの一つです。
『宇宙一わかりやすい高校化学』シリーズは、化学が苦手な受験生が「0」から「1」へ踏み出すための、最強の「導入書」です。
MARCH以上を志望する理系受験生が使用する場合、以下の点を強く意識してください。
1. これは「土台」であり、ゴールではないこと。
2. 「高3の夏前」までに必ず終わらせ、すぐに次の問題集に移ること。
3. 化学に苦手意識がないなら、より効率的な『はじてい』シリーズを選ぶのも賢明であること。
あなたの化学のスタートラインが「偏差値50未満」なのであれば、本書は最高のパートナーになるでしょう。しかし、その「わかりやすさ」に甘えず、MARCH合格というゴールから逆算して、計画的に素早く終わらせることが合格の鍵となります。
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