目次
「共通テスト 数学1A」を2つの異なる試験と比較し、その性質と要求される能力の違いを多角的に分析します。これにより、お客様がご自身の学習戦略を立てる上での客観的な指針を提供します。

慶應義塾大学経済学部経済学科3年生。
スタディコーチで勤務をしており、それ以前も小学生~大学受験生まで幅広い指導経験あり。
受験生の皆さんが損しないよう、お役立ち情報を日々発信していきたいと思っています!
今回の分析では、以下の4つの比較軸を設定し、各試験の特性を明らかにします。
① 問題の性質:問題文の構成や題材、問われ方の特徴
② 要求される主要能力:高得点獲得に不可欠なスキルセット
③ 時間的制約の質:試験時間内に感じるプレッシャーの源泉
④ 対策の方向性:学習において特に重視すべきポイント
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まず、現行の「共通テスト」と2020年まで実施されていた「センター試験」の数学1Aを比較します。両者はマークシート形式という点は共通していますが、その中身は大きく変容しています。
| 比較対象 | 共通テスト 数学1A | センター試験 数学1A |
|---|---|---|
| ① 問題の性質 | 日常事象や会話文形式の長文問題が中心。図や表から情報を読み取る必要がある。 | 数学的な問題設定が直接的に提示される、比較的短い問題文。知識の有無を問う形式が多い。 |
| ② 要求される主要能力 | 読解力・情報処理能力。事象を数学的にモデル化する思考力。 | 計算処理能力・典型問題の解法暗記。迅速かつ正確に解法を適用する力。 |
| ③ 時間的制約の質 | 問題文の読解と状況把握に時間がかかり、思考時間が圧迫される。 | 膨大な計算量や問題数により、手を動かす時間が絶対的に不足する。 |
| ④ 対策の方向性 | 公式の丸暗記ではなく、定義や定理の本質的な理解が不可欠。試行錯誤を厭わない探求力が求められる。 | 問題パターンを網羅的に学習し、解法を即座に引き出す訓練が中心となる。 |
分析の結果、共通テストはセンター試験に比べ、単なる計算力や知識量だけでなく、「数学を現実世界で活用する力」をより重視していることが明らかです。難易度が単純に上下したというより、「難しさの質」が変化したと捉えるべきでしょう。
次に、共通テストと国公立大学の二次試験や難関私立大学の個別試験を比較します。これらは試験の目的そのものが根本的に異なります。
| 比較対象 | 共通テスト 数学1A | 個別学力試験(二次試験) |
|---|---|---|
| 試験の目的 | 基礎学力の達成度を測定する「到達度試験」。広範囲から基本的な理解を問う。 | 大学での学問に必要な能力を持つ人材を選抜する「選抜試験」。深い思考力・応用力を問う。 |
| 解答形式 | マークシート形式(結果のみを評価)。 | 記述式(思考の過程や論理展開も評価)。 |
| 問題構成 | 丁寧な誘導に従って段階的に解き進める形式。 | 誘導がほとんどなく、自力で解法を設計し、最後まで論理を構築する必要がある。 |
| 要求される主要能力 | 与えられた枠組みの中で正確かつ迅速に処理する能力。 | 発想力・論理的思考力・表現力。複数の分野の知識を統合する応用力。 |
共通テストが「地図を渡されて、指示通りに目的地に辿り着く速さと正確さ」を測る試験だとすれば、個別学力試験は「コンパスと僅かな情報だけを渡され、自力で地図を描きながら目的地を見つけ出す力」を測る試験と言えます。両者は評価する能力の次元が異なります。
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Q.
結局、共通テストはセンター試験より難しくなったのですか?
A.
「難しさの種類が変わった」と捉えるのが最も正確です。センター試験が得意だった受験生が共通テストで苦戦する、あるいはその逆のケースも十分に考えられます。単純な計算速度よりも、問題の意図を正確に読み解く国語力に近い能力が求められるようになったため、多くの受験生が「対策しづらい」「難しくなった」と感じる傾向にあります。
Q.
二次試験対策を本格的に行えば、共通テスト対策は不要ですか?
A.
いいえ、別途対策は必要です。二次試験で問われる高度な思考力と、共通テストで問われる情報処理能力や時間管理能力は質が異なります。特に、長文を迅速に読み解く力や、独特の形式に慣れるための演習は不可欠です。二次試験対策で培った数学的思考力を、共通テストというフォーマットで最大限発揮するための「変換トレーニング」が必要だとお考えください。
今回の分析から、共通テスト数学1Aは過去のセンター試験とも、未来の二次試験とも異なる、独自の能力を要求する試験であることが明確になりました。この事実を踏まえ、以下の判断フレームワークを提供します。
もしあなたが、センター試験の過去問演習を中心に行っているのであれば
計算速度や解法パターンの暗記だけでなく、「なぜこの公式が成り立つのか」「この問題は何を意図しているのか」を常に自問自答する学習へシフトすることが急務です。センター試験の過去問は、あくまで知識の確認として用い、共通テスト形式の模試や問題集で「読解と思考」の訓練に時間を割くべきでしょう。
もしあなたが、二次試験対策に重点を置いているのであれば
高い数学力は大きなアドバンテージとなります。しかし、その力を共通テストで確実に得点に結びつけるためには、時間を計った演習が不可欠です。秋以降は、週に一度は共通テスト形式の問題に触れ、時間配分の最適化や、誘導形式にスムーズに乗るための思考の切り替え訓練を行うことを推奨します。共通テストは「別競技」と認識し、専用の対策を怠らないことが重要です。
もしあなたが、数学の学習そのものに苦手意識を持っているのであれば
共通テストの「日常事象を題材にする」という特性は、逆転の好機となり得ます。抽象的な数式にアレルギーがあっても、具体的な場面設定があることで問題に入り込みやすくなる可能性があるからです。まずは教科書レベルの定義・定理を完璧に理解することから始め、焦らずに共通テスト形式の平易な問題から読解に慣れていくことが、克服の第一歩となるでしょう。
最終的な学習戦略は、お客様ご自身の現在の学力、志望校のレベル、そして個人の特性によって決定されます。本レポートが、その戦略を客観的な視点から見直し、最適化するための一助となれば幸いです。