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大学受験における英語学習の根幹をなす英単語。しかし、「ただ単語を暗記するのが苦痛」「覚えても長文で活かせない」といった悩みを持つ受験生は少なくありません。特に英語が苦手な高校生にとって、最初の単語帳選びは今後の成績を大きく左右する重要な選択です。
本記事では、多くの受験生に支持されているZ会出版の『速読英単語 入門編』に焦点を当て、その実力を客観的データと専門的知見から徹底分析します。本当に英語が苦手な高校生の救世主となり得るのか、他の人気単語帳と比較しながら、その効果的な使い方から注意点までを網羅的に解説します。

慶應義塾大学経済学部経済学科3年生。
スタディコーチで勤務をしており、それ以前も小学生~大学受験生まで幅広い指導経験あり。
受験生の皆さんが損しないよう、お役立ち情報を日々発信していきたいと思っています!
『速読英単語 入門編』は、Z会から出版されている「速単」シリーズの中で最も基礎的なレベルに位置する英単語帳です。最大の特徴は、単なる単語の羅列ではなく、約100語前後の英文を読み進める中で、文脈に沿って英単語を覚えていくというコンセプトにあります。これにより、単語力だけでなく、英文を読む力(速読力)や読解力も同時に養うことを目的としています。
| 書名 | 速読英単語 入門編 [改訂第4版] |
| 著者 | 風早 寛 |
| 対象レベル | 高校基礎〜センター試験基礎レベル(現在の共通テストにも対応) |
| 値段 | 1,430円(税込) |
| 公式リンク | `Z会ウェブサイト` |
本書は全70の英文で構成されています。見開きの左ページに英文、右ページにその英文で使われている単語の意味や関連語が掲載されているのが基本レイアウトです。英文のテーマは、歴史、文化、科学など多岐にわたり、知的好奇心を刺激する内容が多くなっています。
学習者はまず英文を読み、文脈の中で単語の意味を推測するプロセスを体験します。その後、右ページで意味を確認し、定着を図ります。この「英文→単語」という流れが、記憶に残りやすい学習サイクルを生み出します。
【塾講師のコメント】
この「文脈の中で覚える」というコンセプトは、特に英語が苦手な生徒にとって大きなメリットがあります。無味乾燥な単語の丸暗記が続かない生徒でも、ストーリーのある英文を読むことで学習への抵抗感を和らげることができます。また、単語が実際の文でどう使われるか(=語法)を自然に学べる点も、後の文法問題や英作文に繋がる重要な要素です。
本書をマスターすることで、大学入学共通テストで求められる語彙力の基礎固めができます。具体的には、約1,300語の見出し語と約600語の関連語、合計で約1,900語を習得可能です。
この参考書は、以下のような受験生に特におすすめです。
・中学校レベルの英単語や英文法に不安がある高校1、2年生
・英語が苦手で、単語の丸暗記に挫折した経験のある高校3年生
・単語力と同時に、長文読解の基礎力も身につけたい受験生
本書の効果を最大化するための使い方を解説します。
ステップ1:まずは英文を読む
意味が分からない単語があっても飛ばして、まずは英文全体の大意を掴むことを目指します。この段階で完璧に理解する必要はありません。
ステップ2:単語の確認と暗記
右ページで分からなかった単語の意味を確認し、覚えていきます。赤シートを活用して効率的に進めましょう。
ステップ3:再度、英文を読む
単語の意味を理解した上で、もう一度左ページの英文を読みます。初回よりもスムーズに読めることを実感できるはずです。
『速読英単語 入門編』の最大の強みは、「単語学習のインプット」と「長文読解のアウトプット(練習)」を同時に行える点にあります。他の多くの単語帳では、「単語を覚える」作業と「長文を読む」作業が分離していますが、本書では学習の初期段階から両者を結びつけることができます。これにより、覚えた単語が「使える知識」として定着しやすくなります。
英語が苦手な高校生向けの単語帳としてよく比較される『システム英単語Basic』と『英単語ターゲット1200』との違いを分析します。
| 比較項目 | 本書(速単 入門) | 競合書A(シス単Basic) | 競合書B(ターゲット1200) |
|---|---|---|---|
| コンセプト | 長文の中で実践的に覚える | 頻出のフレーズで覚える | 一語一義で効率的に覚える |
| 覚え方 | 文脈・ストーリー | ミニマル・フレーズ | 単語と意味の1対1対応 |
| 収録語数(目安) | 約1900語(関連語含む) | 約1500語+多義語 | 1200語+α |
| 長文読解への貢献度 | 非常に高い | 高い | 普通(別途演習が必要) |
| 学習の効率 | 時間はかかるが定着しやすい | 効率的で実践的 | 非常に高い(機械的になりがち) |
【塾講師のコメント】
どの単語帳が優れているか、という問いに唯一の正解はありません。重要なのは「自分の特性に合っているか」です。『速単』は読書好きや、丸暗記が苦手な生徒に最適です。一方で、とにかく短時間で多くの単語を覚えたい効率重視の生徒は『ターゲット』、単語の使われ方(語法)を重視するなら『シス単』が向いています。最初の1冊として、学習へのハードルが低い『速単 入門編』から始めるのは、英語が苦手な生徒にとって非常に良い選択肢と言えるでしょう。
本書は入門編ですが、英文を読むためには最低限の中学レベルの英文法の知識が前提となります。もし「SVOCが分からない」「関係代名詞が何か知らない」というレベルであれば、先に中学英文法の総復習ができる薄い問題集(例:『中学英語をもう一度ひとつひとつわかりやすく。』など)を1冊終わらせてから取り組むと、学習効果が飛躍的に高まります。
この1冊だけで大学受験の単語は足りますか?
到達目標によります。共通テストレベルであれば十分対応可能ですが、難関私立大学や国公立二次試験を目指す場合は、この後にシリーズの『速読英単語 必修編』などにステップアップする必要があります。本書はあくまで強固な土台作りのための1冊と位置づけるのが適切です。
『速読英単語 入門編』は、単なる暗記作業に終始しない、実践的な英語力を養うための優れた入門書です。特に、「単語の丸暗記が苦手で、勉強のモチベーションが続かない」「長文を読むこと自体に強い抵抗感がある」という英語が苦手な高校生にとって、学習の楽しさを感じながら基礎を固められる最良のパートナーとなり得ます。
時間はかかりますが、本書で培った「文脈の中で単語を理解する力」は、後々の高度な長文読解において必ず生きてきます。焦らずじっくりと英語の基礎体力をつけたい受験生は、ぜひ手に取ってみることをおすすめします。