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大学受験生から絶大な支持を集める参考書『一億人の英文法』について、その内容を徹底的に分析します。高校生のあなたが最適な一冊を選び抜くための情報を提供します!

慶應義塾大学経済学部経済学科3年生。
スタディコーチで勤務をしており、それ以前も小学生~大学受験生まで幅広い指導経験あり。
受験生の皆さんが損しないよう、お役立ち情報を日々発信していきたいと思っています!
『一億人の英文法』は、従来の暗記中心の英文法学習に一石を投じた革新的な参考書です。「ネイティブスピーカーが持つ“気持ち”や“コアのイメージ”を理解することで、英語は話せるようになる」という一貫したコンセプトのもと、膨大な文法項目を体系的に解説しています。受験のためだけでなく、「使える英語」の習得を視野に入れている点が最大の特徴です。
| 書名 | 一億人の英文法 ――すべての日本人に贈る「話すため」の英文法 |
| 著者 | 大西 泰斗, ポール・マクベイ |
| 対象レベル | 中学基礎レベル~大学受験・社会人 |
| 値段 | 1,980円(税込) |
| 公式リンク | 出版社(ナガセ)の書籍ページ等 |
本書の構成は、読者の理解を促すために工夫されています。まず、語りかけるような非常に丁寧な口調で書かれており、まるで授業を受けているかのような感覚で読み進めることができます。豊富なイラストや図解が、抽象的な文法の概念を視覚的に捉える手助けをします。内容は品詞の基本的な役割から始まり、時制、助動詞、文型といった核心的な文法項目へと展開され、最終的にはネイティブの感覚を養うための高度な内容まで網羅しています。
【塾講師のコメント】
この本の構成は「なぜそうなるのか?」という知的好奇心を刺激する点で非常に優れています。丸暗記が苦手な生徒や、従来の文法書で挫折した経験を持つ生徒が、英語の面白さに目覚めるきっかけになることが多いです。ただし、大学受験の文法問題を解くための「テクニック」に特化した本ではない点は理解しておく必要があります。
この参考書を通して得られるのは、表面的な文法知識ではなく、英語の根底に流れる論理や感覚です。これにより、文法問題への対応力はもちろん、英作文や長文読解における深いレベルでの読解力が向上します。特におすすめなのは、以下のような高校生です。
・従来の無味乾燥な文法学習に飽き飽きしている人
・英語の「なぜ?」を根本から理解したい人
・大学受験だけでなく、将来的に話せる・書ける英語を身につけたい人
・英文法の知識が断片的で、体系的な理解ができていない人
本書はそのボリュームから、計画的な学習が不可欠です。まずは通読することをお勧めします。最初から全てを暗記しようとせず、物語を読むように全体の流れを掴んでください。その後、学校の授業や問題演習で分からない文法項目が出てきた際に、辞書のように該当ページを読み返す「リファレンス(参照)利用」が効果的です。また、例文は必ず音読し、ネイティブの感覚を身体で覚えるようにしましょう。
最大の強みは、その圧倒的な「納得感」にあります。例えば、前置詞のセクションでは、”on”は「接触」、”over”は「弧を描いて上を越える」といった「コアのイメージ」が提示されます。これにより、”on the table”から”on schedule”まで、なぜ同じ”on”が使われるのかを感覚的に理解できます。このようなアプローチは、他の網羅系参考書や問題集には見られない、本書だけのユニークな価値と言えるでしょう。
ここでは、高校生がよく利用する他の代表的な英文法参考書と比較し、『一億人の英文法』の立ち位置を明確にします。競合として、網羅的な講義形式の『総合英語Evergreen』と、問題演習に特化した『Next Stage 英文法・語法問題』を選定しました。
| 比較項目 | 本書 | 総合英語Evergreen | Next Stage |
|---|---|---|---|
| コンセプト | ネイティブ感覚の理解(話すため) | 体系的・網羅的な知識の整理 | 入試頻出問題のパターン演習 |
| 解説スタイル | 語り口調で丁寧(なぜ?を重視) | 図鑑的・客観的で堅実 | 要点整理+問題解説が中心 |
| 問題量 | 少ない(確認程度) | 各章末に確認問題あり | 非常に多い(約1500問) |
| おすすめ用途 | 通読・参照(英文法の根本理解) | 辞書的な参照(知識の確認) | 問題演習(得点力アップ) |
【塾講師のコメント】
これら3冊は役割が全く異なります。『一億人の英文法』で「なぜ?」を学び、『Evergreen』で知識を体系的に確認し、『Next Stage』でアウトプットと思考プロセスを鍛える、という使い分けが理想的です。全てを揃える必要はありませんが、『一億人の英文法』を選ぶなら、別途アウトプット用の問題集は必須と心得ましょう。
本書は非常に分厚く、700ページ近くあります。そのため、計画性なく始めると途中で挫折する可能性があります。また、前述の通り、入試で頻出の4択問題などを解くための演習量は絶対的に不足しています。この本だけで大学受験の文法問題対策が完結するとは考えないでください。前提知識としては、中学レベルの基本的な英単語や文法用語(主語、動詞、名詞など)が分かっていれば、問題なく読み進めることができます。
実際に本書を利用した受験生や学習者からの声を収集しました。
“今まで丸暗記してきた文法が、この本を読んで初めて線で繋がった感覚。英語を学ぶのが楽しくなった。”
“イラストが多くて分かりやすい。特に前置詞のイメージが掴めたのは大きな収穫だった。”
“分厚すぎて持ち運びに不便。電子書籍版を買えばよかったかもしれない。”
“読んだだけでは問題が解けるようにならなかった。結局、問題集を買い足すことになった。”
この一冊だけで大学受験の英文法は万全ですか?
いいえ、万全ではありません。本書は英文法の「理解」を深めるための本です。大学受験で高得点を狙うには、別途、志望校のレベルに合った文法問題集での演習が不可欠です。本書を「インプット用の土台」、問題集を「アウトプット用の実践」と位置づけてください。
英語が苦手な高校1年生でも使えますか?
はい、非常におすすめできます。むしろ、変な癖がつく前に本書の「ネイティブの感覚」に触れることは、長期的に見て大きなアドバンテージになります。学校の授業と並行して読み進め、英語の全体像を掴むのに最適です。
『一億人の英文法』は、単なる受験対策用の参考書ではなく、英語という言語の「本質」に迫るための指南書です。そのユニークなアプローチは、多くの学習者が抱える英文法の壁を取り払う力を持っています。
結論として、この参考書は「目先のテストの点数だけでなく、一生使える英語の土台を築きたい」と考える全ての高校生に強く推奨します。特に、暗記中心の学習法に限界を感じている生徒にとっては、まさに救世主となり得る一冊です。ただし、本書のポテンシャルを最大限に引き出すためには、必ず問題演習を並行して行い、「わかる」を「できる」に変える努力を怠らないようにしてください。