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『高校数学Ⅰをひとつひとつわかりやすく。改訂版』は、学研プラスから出版されている、高校数学の入門者に向けた参考書です。「数学アレルギー」を持つ生徒や、中学数学の復習から始めたい生徒を対象に、徹底的にハードルを下げた構成が特徴です。
超基礎的な内容を、見開き2ページで1つのテーマとして完結させる形式で、視覚的なわかりやすさと、一歩ずつ進められる安心感を提供し、多くの初学者から支持されています。

慶應義塾大学経済学部経済学科3年生。
スタディコーチで勤務をしており、それ以前も小学生~大学受験生まで幅広い指導経験あり。
受験生の皆さんが損しないよう、お役立ち情報を日々発信していきたいと思っています!
| 書名 | 高校数学Ⅰをひとつひとつわかりやすく。改訂版 |
| 著者 | 学研教育出版 (編) |
| 対象レベル | 高校入門 / 中学レベルの復習~定期テスト基礎 |
| 値段 | 1,485円 (税込) |
| 公式リンク | https://hon.gakken.jp/book/1130543700 |
本書の最大の特徴は、見開きの左ページにイラストを多用した解説、右ページにそれに対応する基本問題を配置した「2ページ1単元」の構成です。各単元が細かく分割されているため、数学が苦手な生徒でも圧倒されることなく、自分のペースで学習を進めることができます。
解説は、キャラクターの会話形式を取り入れるなど、親しみやすい言葉で書かれており、まるで隣で教えてくれているかのような感覚で読み進められます。
【塾講師のコメント】
この「2ページ1単元」の構成は、心理的な負担を極限まで軽減する上で非常に効果的です。数学が苦手な生徒は「何から手をつけていいかわからない」という状態に陥りがちですが、本書は「今日はこの見開きだけやろう」という具体的な目標設定を容易にします。小さな成功体験を積み重ねることが、数学への苦手意識を克服する第一歩となるのです。
この参考書を終えることで、高校数学Ⅰの教科書に書かれている基本的な公式や定理の意味を理解し、最も基本的な計算問題を自力で解けるようになります。大学受験の土台となる「ゼロからイチ」の部分を固めるための学力が身につきます。
特におすすめなのは、以下のような受験生です。
・中学レベルの数学にも不安がある高校生
・学校の授業についていけず、完全に置いていかれてしまった生徒
・独学で数学の勉強を始めたいが、何から手をつけて良いか分からない人
・「数学」という言葉を聞くだけで拒否反応が出てしまう人
まずは、無理に覚えようとせず、解説ページを読み物として読んでみましょう。次に、右ページの問題を、解説を見ながらでも良いので解いてみます。一度で完璧にしようとせず、まずは一周通読することを目指してください。
重要なのは、本書を「ゴール」ではなく「スタート」と位置づけることです。この1冊を2週間~1ヶ月程度の短期間で終わらせ、すぐに次のレベルの参考書(例えば『入門問題精講』など)に進む計画を立てることが、受験勉強としては効果的です。
本書の最大の強みは、その「圧倒的なハードルの低さ」と「心理的安全性」にあります。一般的な参考書が「わかる」ことを目指すのに対し、本書は「嫌いにならない」「挫折しない」ことを最優先に設計されています。
この「挫折させない」という一点において、本書の右に出る参考書はほとんどありません。数学学習の入り口でつまずいてしまった生徒にとって、まさに「救世主」となりうる一冊です。
【塾講師のコメント】
多くの受験生が数学で伸び悩む根本原因は、能力ではなく「数学に対する強烈な苦手意識」です。この参考書は、そのメンタルブロックを解除するのに特化しています。問題が解ける楽しさを再認識させ、次のステップに進むための自信を与えてくれる。これは、ただ知識を詰め込むだけの参考書にはない、非常に大きな価値です。
数学が苦手な生徒向けの参考書として、よく比較される2冊と本書を比較分析します。
| 比較項目 | 本書 | やさしい高校数学(数I・A) | 入門問題精講(数I・A) |
|---|---|---|---|
| コンセプト | 図解と細分化で「挫折させない」 | 語り口調の講義で「なぜ?」を解消 | 厳選された例題で「解き方」を習得 |
| 解説のスタイル | イラスト・図解中心。超シンプル | 会話形式の丁寧な文章。読み物に近い | 問題ごとにポイント(精講)を解説 |
| 問題量 | 最小限(各テーマ1問) | やや少なめ | 標準的(網羅性は基礎問に譲る) |
| 到達レベル | 教科書の例題レベル | 教科書の練習問題レベル | 共通テストの超基礎レベル |
| おすすめな人 | とにかく数学が嫌い・わからない人 | 文章を読むのが苦でない初学者 | 本書の次にやるべき一冊として最適 |
最大の注意点は、この参考書一冊だけでは大学受験には全く歯が立たないということです。本書はあくまで準備運動であり、この後に必ず網羅系の参考書や問題集に取り組む必要があります。
また、本書は数学Ⅰの範囲に限定されています。数学Aや数学ⅡBも同様に学習が必要です。前提知識としては、中学数学レベルが求められますが、不安な場合は同シリーズの『中学数学をひとつひとつわかりやすく。』から始めることも有効です。
“本当に数学が苦手だったけど、この本のおかげで初めて「わかる!」という感覚を味わえました。イラストが多くて読みやすいです。”
“学校の授業でつまずいた部分を復習するのに使いました。説明がシンプルで、要点だけをすぐに確認できるのが良かったです。”
“簡単すぎて、模試や入試問題には対応できない。すぐに終わってしまったので、次の問題集が必須だと感じました。”
“問題数が少ないので、知識が定着しているか不安になる。演習量を確保するために、別の問題集を買い足しました。”
この参考書だけで、大学入学共通テストは戦えますか?
いいえ、不可能です。本書で対応できるのは、共通テストで出題される問題の、ごく一部の計算過程のみです。本書を終えた後、『入門問題精講』や『基礎問題精講』といった、より実践的な問題集へ接続することが必須となります。
この本を終えた後、次は何をやれば良いですか?
学んだ知識を「使える」ようにするため、問題演習を中心とした参考書に進むのが定石です。旺文社の『数学I・A 入門問題精講』が、レベル的にもスムーズに接続できるため、次の1冊として最も推奨されます。より演習量を積みたい場合は『やさしい高校数学』に進み、理解を深めるのも良いでしょう。
『高校数学Ⅰをひとつひとつわかりやすく。』は、大学受験の「攻略本」ではなく、数学の世界への「招待状」のような参考書です。その圧倒的な丁寧さと分かりやすさで、数学への苦手意識を取り除き、学習の第一歩を踏み出す勇気を与えてくれます。
この一冊で合格はできませんが、この一冊がなければ合格へのスタートラインにすら立てない、という生徒は数多く存在します。
あなたがもし、「数学が苦手で、何から手をつけていいか分からない」と悩む高校生であるならば、本書はあなたの状況を打開する最高の「最初の1冊」となるでしょう。
【塾講師のコメント】
焦る気持ちは分かりますが、急がば回れです。土台がなければ、その上にどれだけ知識を積み上げても崩れてしまいます。本書で盤石な土台を築き、自信を持って次のステップへ進んでください。応援しています。