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多くの高校で採用されている定番の教科書傍用問題集『4STEP 数学Ⅰ+A』。本記事では、この教材が持つ特徴などを他の参考書と比較して紹介していきます。

慶應義塾大学経済学部経済学科3年生。
スタディコーチで勤務をしており、それ以前も小学生~大学受験生まで幅広い指導経験あり。
受験生の皆さんが損しないよう、お役立ち情報を日々発信していきたいと思っています!
この記事で分かること
・4STEPの基本情報と具体的な構成
・この一冊で到達できる学力レベル
・学力を最大化する効果的な使い方
・他の類似問題集との客観的な比較
・使用上の注意点と挫折しないためのヒント
『4STEP 数学Ⅰ+A』は、数研出版が発行する教科書傍用問題集です。全国の多くの進学校で、教科書とセットで配布・採用されています。その名の通り、問題が難易度に応じて段階的に配列されており、教科書で学んだ内容を確実に定着させることを目的としています。問題量が豊富で、基礎的な計算問題から応用問題まで幅広くカバーしているのが特徴です。
【塾講師のコメント】
この問題集は「参考書」ではなく、あくまで「問題集」です。つまり、何かを教えてくれる本ではありません。学校の授業や教科書で学んだことを前提に、「自力で解くトレーニングを積む」ための教材と考えるのが最も適切です。この位置づけを間違えると、ただ苦しいだけの演習になってしまうので注意が必要です。
| 書名 | 教科書傍用 4STEP 数学Ⅰ+A |
| 著者 | 数研出版編集部 |
| 対象レベル | 高校基礎〜共通テスト・中堅私大レベル |
| 値段 | 1,078円(問題と解答集)(※学校採用専売品のため、一般書店では購入が難しい場合があります) |
| 公式リンク | 数研出版公式サイト(書店販売はされていない) |
4STEPの最大の特徴は、その名の通り4段階のステップで構成されている点です。
Step A:教科書の例題レベル。基本的な計算や公式の確認問題が中心です。まずはここをスラスラ解けるようにすることが第一目標となります。
Step B:教科書の章末問題レベル。Aよりも少し応用的で、入試の基本問題に相当します。定期テストではこのレベルの問題が中心になることが多いです。
発展問題:Step Bよりも難易度が高く、思考力を要する問題です。中堅大学の入試問題レベルに相当します。
章末問題・総合問題:各章の総まとめとなる問題。複数の単元が融合されていることもあり、実践的な問題が多く含まれます。
この問題集を完璧に仕上げることで、教科書レベルの知識を完全に定着させ、共通テストや中堅私立大学の入試に対応できるだけの計算力と基本的な問題解決能力が身につきます。特に、手を動かして繰り返し練習することで、数学の体力とも言える「計算力」と「典型問題の解法想起力」が飛躍的に向上します。
【おすすめな人】
・学校の授業内容を確実に定着させたい高校1・2年生
・数学の定期テストで高得点を目指したい人
・計算力や演習量を増やしたいと考えている受験生
・難関大学を目指す上で、まず盤石な基礎を固めたい人
4STEPを最大限に活用するための手順は以下の通りです。
1. 授業と並行して進める:授業で習った範囲を、その日のうちに4STEPで演習するのが最も効率的です。知識が新しいうちにアウトプットすることで、定着度が格段に上がります。
2. まずはStep A, Bを完璧に:初学者は、まずStep AとBの問題を「何も見ずに解ける」状態を目指しましょう。分からなければすぐに答えを見るのではなく、教科書やノートに戻って確認する癖をつけることが重要です。
3. 印をつけながら繰り返す:1回目で解けなかった問題、間違えた問題には必ず「×」などの印をつけます。2回目以降は、その印がついた問題だけを解き直すことで、効率的に弱点を克服できます。
4. 別冊解答(詳解)を活用する:学校で配布される解答は、答えのみが記載されている場合が多いです。もし「詳解」が手に入るなら、必ずそれを使って学習しましょう。なぜその答えになるのか、プロセスを理解することが数学力向上の鍵です。
【塾講師のコメント】
「3周はする」とよく言われますが、ただ闇雲に3周しても意味がありません。1周目で「できる問題」と「できない問題」を仕分けし、2周目以降は「できない問題」が「できる」に変わるまで繰り返す、という意識が重要です。最終的にすべての問題に「自力で解けた〇」がつく状態を目指しましょう。
4STEPの最大の強みは、「教科書との圧倒的な連携性」と「網羅性の高さ」にあります。市販の参考書も素晴らしいものが多いですが、学校で使っている教科書の章立てや扱っている題材と完全にリンクしているため、授業の復習ツールとしてこれ以上のものはありません。また、膨大な問題数が収録されているため、「このパターンの問題は解いたことがない」という状況を基礎レベルではほぼなくすことができます。
教科書傍用問題集には、他にも有名なものがいくつかあります。ここでは特に採用率の高い『サクシード』と『クリアー』と比較してみましょう。
| 比較項目 | 本書(4STEP) | (サクシード) | (クリアー) |
|---|---|---|---|
| コンセプト | 段階的なステップアップで基礎を固める | 4STEPと酷似。教科書内容の定着を重視 | 基本的な問題を反復練習することに特化 |
| 問題レベル | 基礎〜応用まで幅広い。発展問題は骨太 | 4STEPとほぼ同等だが、やや標準的 | 基礎・基本レベルの問題が中心で、より丁寧 |
| 問題量 | 非常に多い | 多い | 標準的 |
| おすすめな人 | 基礎から応用まで幅広く演習したい人 | 4STEPと同様だが、少しでも量を抑えたい人 | 数学が苦手で、基礎を徹底的に固めたい人 |
【塾講師のコメント】
これらは姉妹本のようなもので、大きな差はありません。しかし、4STEPは発展問題に少し歯ごたえのある問題が含まれている傾向があります。学校で指定されたものをやり込むのが基本ですが、もし選べる立場なら、数学が得意で先々難関大を目指したいなら4STEP、苦手意識があるならクリアー、その中間がサクシード、という選び方が一つの目安になります。
4STEPを使用する上で最も注意すべき点は、「解答が不親切であること」です。生徒に配布される解答冊子は、多くの場合、最終的な答えしか書かれていません。これにより、なぜ間違えたのか、どう考えればよかったのかが分からず、学習がストップしてしまう危険性があります。この問題を解決するには、以下の方法が考えられます。
・学校の先生や塾の講師に質問できる環境を確保する
・友人やクラスメイトと教え合う
・(入手可能であれば)教員用の「詳解」を手に入れる
また、この問題集は授業で内容を理解していることが前提となります。教科書を読んでも全く理解できない、というレベルの生徒が独力で進めるのは非常に困難です。まずは映像授業や、より解説の丁寧な参考書で基本事項を理解してから取り組む必要があります。
実際に4STEPを使用してきた先輩たちの声を集めました。
“定期テストは、ここから同じような問題がたくさん出たので本当に助かりました。とにかく3周やったら、数学の成績が安定しました。”(高校2年生・理系)
“問題数が多くて大変だったけど、これをやり込んだおかげで計算スピードが格段に上がった。受験数学の土台はこれで作れたと思う。”(難関大合格者)
“答えしか載ってないから、分からない問題が出てくると本当に詰む。先生に質問に行けない性格なので、自分には合わなかったかもしれない。”(高校1年生)
“量が多くて、学校の課題として出されると終わらせるだけで精一杯だった。もっとじっくり考えたかったけど、作業になってしまったのが反省点。”(卒業生)
この一冊だけで大学受験は戦えますか?
目指す大学のレベルによります。共通テストや中堅私立大学レベルであれば、この一冊を完璧にすることで合格点に達することは十分に可能です。しかし、難関国公立や早慶上智レベルを目指す場合は、4STEPで基礎を固めた後、より実践的な入試問題集(『重要問題集』や『青チャート』の発展例題など)に進む必要があります。
問題が多すぎて終わりません。どうすればいいですか?
すべてを完璧にこなそうとすると、確かに圧倒されてしまうかもしれません。まずは定期テストの範囲に絞り、Step Bまでを完璧にすることを目標にしましょう。学校の先生が特に重要だと言った問題や、自分の苦手な単元に絞って取り組むのも効果的です。質を伴わないまま量をこなすのは避けましょう。
『4STEP 数学Ⅰ+A』は、「学校の授業を最大限に活用し、盤石な基礎計算力と典型問題の解法を身につけるための最高のトレーニングツール」です。解説を読んで理解するタイプの参考書ではなく、ひたすら手を動かして数学の体力をつけるための問題集です。
この教材を最大限に活かせるのは、「学校の授業をしっかり聞き、分からないことは先生に質問できる環境にいる、真面目な高校生」と言えるでしょう。数学初学者がこの一冊を正しく使いこなし、やり遂げることができれば、今後の数学学習における強力な土台が築かれることは間違いありません。