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今回は、多くの看護医療系を目指す受験生が手に取る『看護医療系の数学Ⅰ+A』について、その実力を徹底的に分析・解説していきます。ライバルとなる参考書との比較も交えながら、どのような受験生に最適なのか、そして最大限に効果を引き出す使い方まで、詳しく見ていきましょう。

慶應義塾大学経済学部経済学科3年生。
スタディコーチで勤務をしており、それ以前も小学生~大学受験生まで幅広い指導経験あり。
受験生の皆さんが損しないよう、お役立ち情報を日々発信していきたいと思っています!
まずは本書の基本的な情報から確認します。
| 書名 | 看護医療系の数学Ⅰ+A [改訂版] |
| 著者 | 横田直人 |
| 対象レベル | 高校基礎~看護医療系専門学校・大学入試基礎 |
| 値段 | 1,430円(税込) |
| 公式リンク | 文英堂公式ページ |
本書は、看護医療系の入試で特に出題頻度の高い分野に絞って構成されているのが最大の特徴です。数学が苦手な受験生を対象に、中学レベルの復習から始まり、丁寧な語り口で解説が進みます。各単元は見開き完結型で、左ページに要点解説、右ページに練習問題というシンプルなレイアウトで、学習リズムを作りやすいように設計されています。
【塾講師のコメント】
この「頻出分野特化型」の構成は、時間のない受験生にとって非常に合理的です。特に看護医療系の入試では、満点を狙うより「取るべき問題を確実に取る」戦略が重要になります。本書はその戦略にピッタリ合った一冊と言えるでしょう。数学に多くの時間を割けない受験生が、効率よく合格点を確保するための最短ルートを示してくれます。
本書のレベルは、数学の基礎、特に中学レベルの計算や文章題に不安がある人から、看護医療系の専門学校や、一部の大学入試の基礎固めまでをカバーします。偏差値で言えば、40~50前後の受験生が、偏差値55レベルの土台を固めるのに最適な難易度設定です。発展的な問題や、難関大学で問われるような複雑な問題は扱っていません。
この参考書をマスターすることで、看護医療系入試で頻出の基本問題・典型問題を確実に解き切る力が身につきます。具体的には、「二次関数」「三角比」「場合の数と確率」「データの分析」といった分野で、合格点に必要な得点力を養うことができます。
【こんな人におすすめ】
・数学に苦手意識があり、何から手をつけていいか分からない人
・中学数学の復習から始めたい人
・短期間で看護医療系入試の頻出分野だけを効率よく対策したい人
・志望校の数学の配点がそこまで高くない、または基礎問題中心の出題である人
本書の効果を最大化するための使い方を提案します。
1. まずは解説をじっくり読む:
急いで問題を解こうとせず、左ページの解説をしっかり読み込みましょう。「なぜそうなるのか」を理解することが、応用力につながります。
2. 例題を何も見ずに解いてみる:
解説を理解したら、右ページの練習問題を、まずは自力で解いてみます。分からなければ、すぐに解説を見て構いません。
3. 「完璧に解ける」まで反復する:
一度解けただけでは不十分です。各章の問題を「誰かに説明できるレベル」で完璧に解けるようになるまで、最低3周は繰り返しましょう。ケアレスミスが許されない医療現場を目指すなら、計算の正確性にもこだわりたいところです。
4. 過去問で実力をチェック:
一冊を終えたら、必ず志望校の過去問に挑戦してください。本書で学んだ知識が、実際の入試でどのように問われるかを確認し、足りない部分を把握することが重要です。
本書の最大の強みは、その「圧倒的な専門特化性」にあります。一般的な大学受験向け参考書が網羅性を重視するのに対し、本書は「看護医療系」というフィールドで戦うための武器を厳選して提供してくれます。出題傾向の分析に基づき、不要な分野を大胆にカットしているため、受験生は迷うことなく、最短距離でゴールに向かうことができます。
【塾講師のコメント】
この「割り切り」こそが、本書が長年支持される理由です。数学が苦手な受験生は、分厚い網羅系の参考書を前にすると、それだけで心が折れてしまいがちです。しかし本書は薄く、やるべきことが明確なため、「これなら自分でもやり切れそうだ」というモチベーションを維持しやすいのです。この心理的なサポート効果は、特に文系出身の受験生にとって計り知れない強みとなります。
ここでは、本書と同じく看護医療系受験生や数学初学者に人気の参考書と比較分析します。今回は『やさしくていねいな数学Ⅰ・A for 看護医療系』と、より汎用的な『スバラシク面白いと評判の初めから始める数学I』を競合として選定しました。
| 比較項目 | 本書 | やさしくていねいな数学Ⅰ・A for 看護医療系 | 初めから始める数学I |
|---|---|---|---|
| コンセプト | 頻出分野に絞り、最短で合格点を狙う | 超基礎から対話形式でじっくり理解 | 講義形式で数学の「なぜ」を根本から理解 |
| 解説の丁寧さ | 簡潔で要点が分かりやすい | 非常に丁寧。図やイラストが豊富 | 語り口調で圧倒的に詳しい |
| 問題量 | 標準的 | やや少なめ | 標準的 |
| 専門特化性 | 非常に高い | 高い | 低い(汎用) |
| 到達レベル | 看護専門・大学入試基礎 | 中学復習~高校基礎 | 高校基礎~共通テスト基礎 |
本書は中学レベルの復習から始まりますが、最低限、正負の数や文字式の計算に抵抗がない程度の力は前提とされています。もし、そのレベルから不安な場合は、中学数学の薄い問題集を先に1冊仕上げてから取り組むと、よりスムーズに学習を進められます。また、本書はあくまで基礎固めの1冊です。MARCHレベル以上の難関私大や国公立大学を目指す場合は、本書を終えた後、よりレベルの高い問題集(『基礎問題精講』など)に接続する必要があります。
実際に本書を使用した受験生の声をまとめました。
“数学が本当に苦手で、どこから勉強すればいいか分からなかった私でも、この本は最後までやり通せました。出る分野がまとまっているので、無駄なく勉強できたのが良かったです。”
“解説がシンプルで分かりやすい。見開きで1つのテーマが終わるので、毎日コツコツ進めるのに最適でした。おかげで数学アレルギーがなくなりました。”
“基礎の基礎は分かっている人には、少し物足りないかもしれません。解説がシンプルすぎて、なぜそうなるのかが分からない部分がたまにありました。”
“この1冊だけで上位の大学に合格するのは難しいと感じました。あくまで土台作りの本で、過去問演習は必須です。”
この参考書を終えるのに、どれくらいの期間がかかりますか?
1日1~2テーマのペースで進めれば、1ヶ月~1ヶ月半程度で1周目を終えることが可能です。重要なのは期間よりも完成度なので、焦らず自分のペースで進め、反復演習に時間をかけましょう。
この本を終えた後、次は何をやれば良いですか?
まずは志望校の過去問を解いてみましょう。それで合格点に届くようであれば、本書の反復演習で精度を高めます。もし点数が足りなければ、同じ出版社の『看護医療系の数学 実戦編』に進むか、より網羅性の高い『基礎問題精講』などで、抜けている知識を補強するのがおすすめです。
『看護医療系の数学Ⅰ+A』は、「数学が苦手で、時間がない中で看護医療系の入試を突破しなければならない受験生」にとって、最高のパートナーとなりうる一冊です。
頻出分野に絞り込まれた構成と、挫折しにくいシンプルなレイアウトは、数学への苦手意識を克服し、効率的に合格点を獲得するための最短ルートを提供してくれます。一方で、より高いレベルを目指す受験生や、数学を得点源にしたい受験生にとっては、あくまで「最初の一歩」または「基礎の確認用」という位置づけになります。
自分の現在の学力と志望校のレベルを正確に把握し、この参考書が持つ強みを最大限に活かせるかどうかを見極めることが、合格への鍵となるでしょう。