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今回は、河合出版から刊行されている『文系数学の良問プラチカ 数学Ⅰ・A・Ⅱ・B』について、解説していきます。文系受験生にとって、数学をどこまでのレベルに仕上げるかは合否を分ける重要な戦略です。文系プラチカがあなたの受験勉強に合っているか、一緒に見ていきましょう。
東京大学文科三類在籍中。
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「プラチカ」という名前を聞くと、「難しい」「上級者向け」というイメージを持つ受験生が多いのではないでしょうか。そのイメージは概ね間違いではありません。しかし、文系プラチカは「ただ難しい」のではなく、「良問」を通じて最難関大学が要求する思考力を効率よく養うために設計された、非常に戦略的な一冊です。今回はその実態を解き明かしていきます。
『文系数学の良問プラチカ』は、河合塾の「入試精選問題集」シリーズの一つです。名前の通り、文系数学の入試問題から、合否を分ける質の高い「良問」を厳選して収録しています。基礎的な網羅系参考書(「チャート式」や「Focus Gold」など)を終えた受験生が、入試本番レベル、特に難関国公立大学や早慶上智の文系学部で高得点を狙うための演習書として、長年高い評価を得ています。
| 書名 | 入試精選問題集 文系数学の良問プラチカ 数学Ⅰ・A・Ⅱ・B・C |
| 著者 | 鳥山 昌純(河合塾講師) |
| 対象レベル | 入試標準 〜 最難関(偏差値目安 55〜70) |
| 値段 | 1,375円 (税込) |
| 購入リンク | amazonでの購入はこちらから飛べます |
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本書の最大の特徴は、その問題数の「少なさ」と「質の高さ」のバランスにあります。
問題数: 全149題(3訂版)
構成:
問題冊子と解答解説冊子の2分冊構成が可能です。問題ページには、問題を解く上でのヒントとなる「指針」が掲載されています。解答解説は非常に詳細で、一つの問題に対して複数の解法(別解)が示されていることも多く、思考のプロセスを深く学ぶことができます。
本書は「入試標準〜最難関」レベルに位置付けられます。具体的には以下の通りです。
到達レベル:
地方旧帝大(北大、東北大、名大、九大など)、早慶上智の文系学部で合格点を取るレベル。さらに、東大、京大、一橋大といった最難関文系学部の数学で「差をつける」ための土台となる思考力を養うことができます。
前提レベル:
教科書レベルの公式や定義はもちろん、「チャート式(黄・青)」や「Focus Gold」などの網羅系参考書の例題・練習問題レベルを自力で解き切れる学力が必須です。偏差値で言えば、最低でも55以上、できれば60程度の実力がある状態で取り組むのが最も効率的です。
「プラチカ」を「基礎固めが終わったから次の一冊」として安易に選ぶのは危険です。基礎固めとは「チャートの例題が解ける」レベルではなく、「チャートの例題レベルの解法は、問題文を見た瞬間に手が動く」レベルを指します。プラチカの各問題は、それらの基礎的な解法を複数組み合わせたり、深い思考を加えたりしないと解けないように作られています。
本書を完璧に仕上げることで、「文系数学」の枠内における高度な思考力、発想力、そして論理的な答案記述力が身につきます。単なる解法暗記から脱却し、初めて見る問題に対しても、自分の知識を総動員してアプローチする力が養われます。
こんな人におすすめ:
・東大、京大、一橋大などの最難関国公立文系を目指す受験生
・早慶上智の文系学部で、数学を得点源にしたい受験生
・基礎的な網羅系参考書を1冊完璧に仕上げた人
・「解法暗記」のステージを卒業し、「思考力」を鍛えたい人
本書は1問1問が重く、習得に時間がかかる(1周に2ヶ月、完璧にするまでに3〜4ヶ月)ことを考慮する必要があります。
最難関国公立(東大・京大・一橋)志望者:
高校3年生の夏休み開始〜遅くとも9月中にはスタートしたいところです。年内(12月末)までに最低2周を終え、共通テスト対策と並行しつつ、年明けからは志望校の過去問演習に本格的に移行するのが理想的なスケジュールです。
早慶・難関国公立志望者:
高3の夏休み〜秋(10月頃)に開始し、冬休み頃までに仕上げます。本書レベルがオーバーワークにならないか(志望校の過去問レベルと乖離していないか)は、競合書と比較して判断する必要があります。
最大の注意点は「挫折」です。前述の通り、基礎的な解法が定着していない状態で本書に取り組むと、ほとんどの問題が解けず、解説を「読む」だけの作業になってしまいます。必ず、網羅系参考書の例題レベルを完璧にしてから接続してください。
また、1問あたり最低でも20〜30分は自分の頭で考える時間を確保してください。すぐに答えを見る学習法では、本書の価値である「思考力を鍛える」という目的を達成できません。
1. まずは何も見ずに、時間を計って(例:30分)自力で解き切ることを試みます。
2. 解けなくても、必ず「どこが分からなかったのか」「どういうアプローチを試みたのか」を明確にします。
3. 解答解説を熟読します。「指針」で示された着眼点と自分の思考のズレを確認します。
4. 解法を理解したら、必ずもう一度、何も見ずに自力で答案を再現します。
5. 2周目以降は、間違えた問題や、解法を思いつくのに時間がかかった問題を中心に復習し、即座に解法が立てられる状態を目指します。
文系プラチカの最大の強みは、「約150題」という限られた問題数で、文系最難関レベルまでに必要な思考のパターンを効率よく網羅できる点にあります。問題数が多すぎないため、「何周も繰り返して完璧にする」という演習書の王道の使い方に適しています。また、解説が詳しいため、なぜその解法に至るのかという「思考のプロセス」を深く学べる点も、他の演習書に対する優位性と言えます。
文系数学の応用演習書として、よく比較対象となる2冊と比べてみましょう。
ここが参考書選びの最重要ポイントです。ペルソナ(文系受験生)といっても、志望校によってゴールは異なります。「プラチカ」が難関〜最難関向けなのに対し、「入試の核心 標準編」は難関大の標準レベル、「CanPass」は国公立標準レベルの典型問題演習、と明確なレベル差があります。自分の志望校の過去問を見て、どのレベルの演習が最適かを見極めてください。
| 比較項目 | プラチカ | 文系数学入試の核心 標準編 | CanPass 数学ⅠAⅡB |
|---|---|---|---|
| コンセプト | 最難関レベルの良問で思考力を鍛える | 難関大の標準的な良問をコンパクトに仕上げる | 国公立標準レベルの典型問題を確実に解ききる |
| 対象レベル | 難関〜最難関(旧帝大・早慶上位・一橋など) | 中堅〜難関(MARCH・関関同立・地方国公立) | 標準〜難関(地方国公立・中堅私大) |
| 問題数 | 約149題 | 100題 | 約117題 |
| 1問の重さ | 重い(思考力重視) | 標準 | 標準(典型問題多め) |
| 解説の詳しさ | 非常に詳しい(思考プロセス重視) | 比較的あっさり(要点中心) | 詳しい(解法手順が丁寧) |
“これ1冊を完璧にしたら、一橋の数学でも十分戦える力がついた。問題数は少ないが、1問から学べることが本当に多い。”
“解説がとにかく丁寧。特に『指針』が秀逸で、どういう視点で問題に取り組むべきかが分かるようになった。”
“青チャートが終わったからと手を出したが、難しすぎて心が折れた。基礎が固まってないと無理。”
“問題が難しく、1問に1時間かかることも。時間がない高3の秋から始めるのはきつかった。”
あなたの勉強計画、本当にそれで大丈夫?
スタディコーチでは、質×量を達成する学習計画を立て、それをやり切れるサポートをします。
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『理系数学の良問プラチカ』との違いは何ですか?
当然ですが、理系版には「数学Ⅲ」が含まれます。また、同じⅠAⅡBの範囲でも、理系版の方がより計算量が多かったり、高度な発想を要求したりする問題が選定されている傾向があります。文系受験生は、本書(文系プラチカ)で十分です。
「青チャート」が終わったら、すぐに接続できますか?
「青チャートの例題と練習問題を完璧に(=即座に解法が思い浮かぶ状態に)した」のであれば、接続可能です。しかし、もしそのレベルに不安がある場合は、先に『CanPass』や『入試の核心 標準編』などでワンクッション置くか、青チャートの「エクササイズ」や「重要例題」レベルをもう一度復習することをおすすめします。
問題数が約150題と少ないですが、網羅性は大丈夫ですか?
本書は「基礎的な解法」を網羅するタイプではありません。あくまで「入試で合否を分ける応用的な思考パターン」を網羅するものです。1問で複数のテーマを扱う良問が多いため、問題数の見た目以上に網羅性は高いと言えます。ただし、前提となる基礎解法の網羅は、チャート式などで別途完了させておく必要があります。
『文系数学の良問プラチカ』は、文系数学の演習書として最高レベルの一冊です。厳選された良問と詳細な解説を通じて、最難関大学の入試で戦うための本質的な「思考力」を養うことができます。
ただし、そのレベルの高さゆえに、取り組むべき受験生は限られます。基礎が固まっていない受験生や、MARCH・地方国公立レベルが志望校の受験生にとっては、オーバーワークになる可能性が高いです。比較表で示した競合書も参考に、自分の現在の学力と志望校のレベルを冷静に分析した上で、本書に取り組むか判断してください。