目次
受験生の皆さんこんにちは!今日は塾講師の専門的な視点から、河合出版のロングセラー『文系の数学』シリーズ(赤・青)を分析します。 今回は特に、「数学が苦手だが、日東駒専・MARCH・国公立大への合格を目指したい」という受験生に対して、シリーズの導入となる『重要事項完全習得編(赤)』を中心据えつつ、応用編である『実戦力向上編(青)』への接続も含めて、この参考書の使い方や特徴について解説します。
この記事を監修した人
慶應義塾大学経済学部経済学科3年生。
スタディコーチで勤務をしており、それ以前も小学生~大学受験生まで幅広い指導経験あり。
受験生の皆さんが損しないよう、お役立ち情報を日々発信していきたいと思っています!
『文系の数学』シリーズは、数学I・A・II・B(改訂版ではCも含む)の重要問題を厳選し、短期間で効率よく合格点を取るために設計された演習書です。「教科書レベルはわかるが、模試や入試問題になると解けない」という層をターゲットに、「なぜそう解くのか?」という解法の必然性(考え方のプロセス)を言語化している点が最大の特徴です。
シリーズは以下の2冊で構成されています。
1. 『重要事項完全習得編(赤)』:偏差値45〜55向け。入試の基礎〜標準レベル(日東駒専・MARCH下位・地方国公立)。
2. 『実戦力向上編(青)』:偏差値55〜65向け。入試の標準〜応用レベル(MARCH上位・早慶・難関国公立)。
本記事では、まず最初に取り組むべき『重要事項完全習得編』のスペック詳細を分析します。
| 書名 | 文系の数学 重要事項完全習得編 改訂版 (および実戦力向上編) |
| 著者 | 堀尾 豊・杉山 義明(河合塾講師) |
| 対象レベル | 共通テスト〜MARCH・国公立標準レベル |
| 値段 | 約1,210円〜1,320円(税込) |
| 公式リンク | Amazon |
最大の強みは、「網羅系参考書(チャート式など)の挫折者に対する救済力」です。青チャートなどが1000題近い問題数を抱えるのに対し、本書は約150題(例題ベース)という圧倒的なコンパクトさを誇ります。にもかかわらず、入試で頻出の「典型問題」は漏らさずカバーされています。
また、解答解説が「式変形」だけでなく、「文系学生が躓きやすいポイント」や「なぜその解法を選択するのか」という日本語の解説に重きを置いているため、独学でも詰まりにくい設計になっています。
1. 完全に数学の初学者の受験生には厳しい
「教科書の公式も危うい」レベルの生徒には向きません。解説は丁寧ですが、あくまで「入試問題への橋渡し」であり、教科書ガイドではありません。
2. 演習量の絶対的な不足
効率を重視している分、計算練習の絶対量は不足します。計算ミスが多い生徒は、別途計算ドリルなどで補強する必要があります。
3. 最難関大にはこれ1冊では届かない
『重要事項完全習得編』だけで早慶や旧帝大の文系数学と戦うのは無謀です。これらを志望する場合は、必ず続編の『実戦力向上編』へ接続する必要があります。
1テーマにつき「例題」+「演習問題」のセットで構成されています。
・例題(約150題):解法のポイント(必勝ポイント)が明記されており、インプット用として機能します。
・演習問題(約120題):例題の類題。定着確認用です。
『重要事項完全習得編』は、文系入試の頻出パターン約150個を「道具」として揃えることを目的としています。
【重要事項完全習得編】
スタート地点:偏差値45〜50(教科書の章末問題レベルはなんとなく解ける)
到達地点:偏差値55〜60(日東駒専合格、MARCH・地方国公立の基礎に対応)
【実戦力向上編】(シリーズ接続後)
スタート地点:偏差値55〜
到達地点:偏差値60〜65(MARCH上位、早慶、難関国公立に対応)
「チャート式が分厚すぎて終わらない」「授業で習ったはずなのに、テストになると手が動かない」という人に最適です。この本を仕上げることで、「問題文を見た瞬間に解法が思い浮かぶ」状態(解法のパターンプラクティス)が完成します。
MARCH・国公立志望の高3生の場合:
夏休み前(7月末)までに『重要事項完全習得編』を完璧にし、夏休み中に『実戦力向上編』や過去問演習に入れるのが理想的なペースです。
高1・高2生であれば、学校の進度に合わせて補助教材として使い、高2の終わりまでに『重要事項』を一周できれば、受験学年で大きなアドバンテージになります。
前提知識として、数学I・A・II・B(C)の教科書レベルの用語や公式の理解は必須です。「サインコサインって何?」という状態から入る本ではありません。その場合は『やさしい数学』などの導入書から始めてください。
1. まずは例題を解く:5分考えて分からなければすぐに解説を見る。
2. 「必勝ポイント」を熟読:解答の右側にある「なぜ?」の解説を読み込み、解法を暗記ではなく理解する。
3. 解き直し:解説を閉じて、もう一度自力で答えまで導けるか確認する。
4. 演習問題へ:時間があれば下の演習問題を解く。時間がなければ例題だけで1周する。
5. レベルアップ:『重要事項』が完璧になったら『実戦力向上編』へ進む。
「文系の」と銘打っている通り、数IIIを含まない構成で、かつ「文系難関大特有の、計算が煩雑だったり発想が必要な問題」への耐性を効率よく養える点です。理系用の本を薄くしただけのものではなく、文系入試の傾向に特化している点が非常にユニークです。
| 比較項目 | 本書(重要事項) | 数学 基礎問題精講 | 青チャート |
|---|---|---|---|
| コンセプト | 文系入試の「道具」を最短で揃える | 入試基礎をコンパクトに網羅 | 辞書的な完全網羅 |
| 解説の詳しさ | 非常に詳しい(思考プロセス重視) | あっさり(要点重視) | 詳しいが、堅い |
| 問題数・網羅性 | 約150題(厳選) | 約150題(厳選) | 約1000題(圧倒的) |
| 到達偏差値 | 55-60(これ1冊でMARCH基礎) | 50-55(日東駒専・共通テスト) | 60-65(難関大まで対応可) |
| おすすめ度 | ★★★★★ | ★★★★☆ | ★★☆☆☆(挫折率高) |
今回のように「数学が苦手なMARCH・国公立志望者」にとって、『文系の数学 重要事項完全習得編』は最強の武器になります。
よく比較される『基礎問題精講』も素晴らしい本ですが、解説があっさりしており、数学アレルギーのある生徒には「なぜここでこの式変形をするの?」という疑問が残りやすい傾向があります。その点、本書は「考え方」の解説が手厚いため、独学での進めやすさが段違いです。
一方で『青チャート』は、今の段階で手を出してはいけません。量が多すぎて消化不良を起こし、結局「何も身につかない」リスクが高いです。「重要事項」を完璧にしてから、さらに上のレベルを目指す際に「実戦力向上編」に進むルートが、最も挫折せず、かつ確実に実力がつきます。
P.S. どの参考書を選ぶべきか、または具体的な進め方で迷っている場合は、私たち東大・早慶コーチが個別の学習計画を一緒に作成します。
» まずはLINEで気軽に相談してみる
“高3の夏まで数学偏差値40台でしたが、この本(重要事項)を3周したら偏差値55まで一気に伸びました。解説の『必勝ポイント』を覚えるだけで、模試の問題の見え方が変わります。”
“青チャートで挫折したけれど、これなら薄いのでやりきれました。そのあと青い方(実戦力向上編)もやりましたが、接続がスムーズで、MARCHの過去問も戦えるようになりました。”
“問題数が少ないので、これだけで安心するのは危険かも。あくまで解法パターンの暗記用と割り切って、演習は別の本や過去問で補う必要がありました。”
理系の受験生ですが、使ってもいいですか?
基礎固めとしては非常に有効です。ただし、数IIIは含まれていないため、あくまでI・A・II・B(C)の基礎確認用として使い、その後理系専用の問題集へ接続してください。
『重要事項』をやらずに、いきなり『実戦力向上編』から始めてもいいですか?
偏差値が既に55以上あり、青チャートの例題レベルならほぼ即答できる状態であれば大丈夫です。しかし、基礎に少しでも不安があるなら『重要事項』で抜け漏れを確認してからの方が、結果的に近道になります。
『文系の数学』シリーズは、数学に苦手意識を持つ文系受験生にとっての救世主です。特に『重要事項完全習得編』は、膨大な数学の学習範囲を「合格に必要なコア部分」に圧縮してくれます。
おすすめする受験生:
・数学の偏差値が50前後で伸び悩んでいる人
・チャート式などの分厚い参考書で挫折した経験がある人
・MARCHや国公立を目指すが、数学にあまり時間を割けない人
・「なぜそう解くのか」を言葉で理解したい人
まずは『重要事項完全習得編』をボロボロになるまでやり込み、自信がついたら『実戦力向上編』へ。この黄金ルートで、志望校合格を勝ち取ってください!
『文系の数学 重要事項完全習得編』の
使い方・進め方で迷っていませんか?
スタディコーチは、東大・旧帝大・早慶生のコーチが
学習管理をして合格に導く塾です!
「この参考書を自分の計画にどう組み込むか」からLINEで気軽にご相談ください。