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こんにちは。
蒸し暑い梅雨の時期、受験生の皆さんは勉強がはかどっていますか?
無理して「捗っている」ように見せなくても大丈夫。
もし思うように進んでいないのなら、それを認めて、自分を責めないことも大切です。
私自身も、かつて受験生でした。思うように勉強が進まず、スランプのような時期もありました。
当時のクラスに、本好きな友人が一人いたのを思い出します。彼は常に何かしらの小説を読んでいましたが、学力テストでは学年300人中、上位100位以内に入る程度。決して“優等生”ではありませんでした。
けれど、彼が語る小説の世界はまるで評論家のようで、本を読むことの価値は、成績以上の深みにあるのだと気づかされました。
その彼の影響で読んだのが、石川達三の小説『青春の蹉跌』です。
この作品の存在を初めて知ったのは中学2年生のとき。給食時間に、放送部が読書感想文の優秀作品を朗読していたのですが、その中で「打算的」という言葉に初めて触れました。
当時の私には少し難解な言葉でしたが、なぜか心に引っかかった記憶があります。
そして高校生になり、例のクラスメイトに薦められて、この本を手に取りました。
物語の主人公・江藤賢一郎は、貧しい家庭に生まれながらも、強い野心と打算的な性格を持った大学生。
資産家の娘との結婚と司法試験合格で“成功者”になることを夢見ていました。
しかしある日、かつて家庭教師をしていた教え子・登美子が妊娠を告白。
その存在が「成功の障害」になると判断した賢一郎は、彼女を殺害してしまいます。
逮捕された後、留置場で彼女の妊娠は他の男性によるものだったと知らされる――という、非常に衝撃的な展開です。
この小説を書いたのは石川達三。戦後文学を代表する作家の一人で、人間の業や社会の歪みに深く切り込んだ作品を多く残しています。
映画版では主演が萩原健一で、ラストではアメフトのプレー中に死亡する演出がありました(首の骨が折れるような効果音が印象的でした)。
ただ、私には江藤賢一郎と萩原健一のキャラが結びつかず、キャスティングミスでは?と当時は思ったものです。
今なら誰が適役でしょうか……考えてみるのも面白いですね。
この小説、正直いって受験に役立つわけではありません。
むしろ暗くて重たいテーマなので、勉強の合間に読むには不向きかもしれません。
でも、私はこの本を通じて「打算的」という言葉の意味を、肌で感じるように理解できた気がします。
よく耳にするけど本当は曖昧にしかわかっていない言葉──そんな言葉に、小説を通じて具体的なイメージを与えることができる。
それは、読書という「疑似体験」の大きな効用だと思います。
もちろん、殺人なんて現実に経験するわけにはいきません。
でもフィクションの中で「なぜこんな行動をとったのか?」「どうして破綻してしまったのか?」と考えることは、自分の思考を深める訓練にもなります。
私はこの小説を、夜の23時から朝の4時すぎまで一気に読破しました。
翌朝、あのクラスメイトと「どうして江藤は露見しやすい場所に遺体を遺棄したんだろう?」なんて、サスペンスドラマさながらの会話を交わしたのを今でも覚えています。
今改めて読み返すと、「打算的」であることの怖さや哀しさ、そして“人生における選択の重さ”を考えさせられます。
だからこそ、中高生のうちに読んでおいて損はない一冊だと思います。
受験勉強に疲れたとき、成績が伸び悩んだとき。
そんな時期に、“読んでも受験には役立たないかもしれない本”を読んでみるのも悪くありません。
その一冊が、これからの人生であなたを助けてくれる時が、きっと来るはずです。
しかし、殺人を犯すまでの事態を引き起こしたというのに、それを「蹉跌」とした作者の意図は如何に?
蹉跌(つまづき)というにはその代償はあまりにも大きい・・・。
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